江口さんとお家時間【江口拓也】

11時間目 ページ12

バンッと勢い良くドアを開け私の部屋に入ってきた彼

「ねぇえぇええぇ」

『仕事終わってないの！ちょっと待って！』

「じゃあ待ってる」

そう言って私の部屋の椅子に腰掛ける


5分後

「ねぇ、まだ？」

『まだ』

20分後

「ねぇ」

『あとちょっと』

40分後

「遅すぎない？」

『ちょっと新しい資料が送られてきて…』

1時間後

「…」

『…』


1時間半後

「っだぁああぁあッ！！！」

『うおっ』

突然叫びだした彼

『ど、どうしたの…？』

「遅い！！！俺かまってほしいの！！放置プレイは好きじゃないんだけど!??!」


時計を見ると結構な時間が経っていた

彼がしびれを切らすのもうなずける

仕事はほっておけないし


来週には終わらせて資料を送らなければならない


『ごめん！

けどあとコレだけだから！

待ってて！』

「すぐ終わらせてよ」

ブスッとしながら先程の椅子に深く腰掛ける


一生懸命作業したけど終わったのは1時間後だった

申し訳ない気持ちを心に後ろにいる彼を見る


椅子の上で大きな体を抱え込み体育座りの体制でシュンとしてる


その姿はまるで捨てられた大型犬

垂れ下がった耳としっぽが見えてきそう


『た、拓也くん…？仕事終わったよ〜』

そっと声をかける

ピクッと反応したものの顔は上げない

へそを曲げたらしい

『ごめんなさい！でも今日の仕事は終わったから！ね？』

「ちょっとって言ったじゃん」

『それはごめん』

「別にいいけどね！」

ふんっと言わんばかりに顔をそらされる

『起こってる？』

「別に？」

……………

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