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はっきりと耳に届いた画面越しの言葉。
小さく“え…”と僅かに声が漏れる。
『君に出会ってからずっと…好きだったんだ。君にはマークがいるのは分かってる…でも、この気持ちだけは伝えたかった』
さっきまでの暗い声ではなく、真剣そのものな声。
冗談なんかじゃないのは明白だ。
フィディオからも彼…マークと同じように覚悟を感じられたから。
だから私も…覚悟を決めて、伝えなければいけない。
「…ありがとう、フィディオ。あなたの気持ち、ちゃんと伝わった。でも…ごめんなさい。私はマークの事しか好きになれないんだ。これからも、この先も…」
『うん…そう言ってくれて安心したよ。そんな君だから、俺も好きになったんだ』
やっぱり…抱いてくれた好意に応えられないのは辛い。
何度経験してもこの胸の苦しさだけは、絶対に消す事は出来ないんだ。
『A…俺のわがまま、一つだけ聞いてくれないか？』
「わがまま？」
『今日の夜だけでいい…俺とデートしてくれませんか？』
またも予想のつかなかった言葉。
「デートって…」
『いや、デートというか…ほんの少しでいい。今、Aに会いたい……なんて…やっぱりダメだよな…ごめん、今のは忘れ…』
「…分かった」
彼が最後まで言い終わる前に返事をする。
私の承諾にフィディオはかなり驚いた声を出した。
『えっ…いい、のか…？』
「うん…今夜だけなら。マークにはちゃんと事情を話すよ。だから、大丈夫」
もちろんマークの事は頭に過った。
彼がいるのに他の男の子とデートだなんて…普通なら絶対にしない。
それでも…フィディオは大切な友達だ。
こんなにも勇気を振り絞って告白してくれた彼の頼みを私が叶えられるのなら、叶えてあげたいと思う。
それに…今の彼をこのまま一人にさせておきたくはなかったんだ。
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作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月23日 16時
