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着信の入った携帯を取り出してみれば、そこにはフィディオの名前が表示されている。
驚いて慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし？」
『あ…もしもし、A？今いいかな……？』
「うん、大丈夫。どうしたの…？」
明らかに元気のない声。
かなり参っているのがすぐに分かった。
『あのさ…今日の試合、来てくれたんだな。だけど…すごいカッコ悪いとこ見せちゃったね……』
「フィディオ…そんな事ないよ」
やはり今日の試合結果を気にしていた。
今の彼は計り知れない程のショックを受けているに違いない。
だからせめて…カッコ悪いなんて思わないで欲しいと、それを伝えたかった。
『必ず決勝戦に進むって約束したのに…果たせなかった。リトルギガントには、俺の力なんてこれっぽっちも通用しなかったんだ……』
こんなにも弱音を吐くフィディオは初めてだ。
私にこうして辛い思いを打ち明けてくれる彼に、私は何て声を掛ければいいのだろう。
どんな言葉を送れば…
「…フィディオ、すごく悔しかったよね。決勝戦で会えないのは辛いけど…だからこそ、貴方にも見ていて欲しい。円堂君が…イナズマジャパンがきっと、敗れてしまったチームの分の思いを胸に優勝してみせるから。そしたらまた次のステージで、お互い約束を果たそう」
突きつけられた現実から目を逸らしても、何も変わらない。
決まってしまった事はもう受け入れるしかないんだ。
そこから先はまた前を向いて、歩き出せばいい。
立ち直るまでどんなに小さな一歩でも…少しずつでもいいから…一歩一歩、確実に。
フィディオならまたそれが出来るって、信じてる。
『A……』
フィディオが私の名前を呼ぶと、そこから少しの間沈黙が訪れる。
彼が次の言葉を話したくなるまで私はただ静かに待った。
『ねえ、A…聞いてくれる？』
「うん。何でも言ってよ」
向こう側から深呼吸が一度聞こえた後…
『俺、Aの事が好きだ』
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作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月23日 16時
