僕らは出来ない

製造ナンバー・NO.69 ページ8

少女は研究者が無意識の内に落としていった薄い本のようなものをペラペラと読んでいた。

「自分たちが…【完璧な少女】を開発するために作られている……。そんなの自分が意識を持った時から認知していること。今更これを解読するなど理解不能。」

妙に演技がかった様な話し方をするが、少女には全くそのつもりは無かった。
まるで人工知能の塊だ。全てを紐解いて、正解へと導く。


「此処に居る意味も理解不能。世の中の女性は街でお洒落をして歩くという情報があるのに…。自分たちも一応女性に入るはずなのですが。」


「お、おお？ごめん、ちょっと俺には難しいかもしれないよ」


先程から数時間、少女の会話に付き合わされていたレナは軽く溜息を吐いた。
【完璧な少女】を作るため、最初に搭載された機能は頭脳だった。その為レナも決して頭が悪いわけではないのだが、少女の話し方があまりにも聞き慣れないため理解に苦しむのだろう。


「レナ、ちゃんと聞いて下さい。でないと貴方が困る時があるのかもしれないのですから」


少女の名はムク
製造ナンバー、NO.69

ムクのこめかみから後頭部には黒い包帯が巻いてある。


「ほんと、その小さい身体と頭にどうやったらここまでの知識が入るんだ？」

「自分は八歳から十歳くらいの見た目で作られています。九歳の平均身長と自分の身長はほぼ一致しているので小さいという言葉は撤回していただかないと」

「え…うん、ごめん……ね？」


ムクは、感情を感じれれない。
喜び、怒り、哀しみ、楽しみ。ムクには訳の分からない、実在しないものだと確定されている。



「…レナは、このまま此処に囚われ続けてて良いと、そう思っているのですか。」


「いや、特には考えたことがないけど」







「自分は、現状、全くここにいる利益が無いと分析します。自分たち【失敗作】にとって、害しかないと。」






・・・・・・

No.69 ムク 感じられない
〈データ〉
身長 １３４ｃｍ
体重 ２９ｋｇ
性格 無気力
好物 ハンバーグ
年齢 九歳くらい
備考 冷酷幼女
悩み 特に無し(感じることがない)

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