【M./S/S.P】等価交換のなんでも屋 (ページ6)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:6,860 hit

昼夜ページ6

ふぁぁ、と隣から間抜けな声が聞こえた。

「お前寝るんじゃねえぞ」
「まだ寝てない」
「まだってことは今から寝る気満々じゃねえか」

既に目が据わっているえおえおに呆れながら、しっかり視線を前に固定する。このへんは昼も夜も人通りが比較的少ないが、いつどんな酔っ払いとかが飛び出してくるかもわからない。
警察が人轢いたら洒落にならないし。俺は酔っぱらって飛び出してきた奴が悪いとは思うけど。

「あろま、このへんって夜営業してる店あんの」
「よく見ろ。何軒に一軒かは風俗だぞ」
「………マジ？」

さっきまで眠そうで目が据わっていたえおえおが、更に目を細めた。
確かにこのへんの通りは、昼間こそ喫茶店やレストランを経営してるものの夜は夜の仕事をしている店が多い。
ただ、俺たちにとっちゃそんなことはどうでもいい。昼間何しようが、夜何しようが関係ない。流石に暴力沙汰になれば止めに入るけど。

「とりあえず、話のわかりそうな店に聞きに行くだけいくべ」
「了解」

普通に夜も喫茶店みたいな、バーみたいな雰囲気を醸し出してる店の前にパトカーを止める。幸いにも外からじゃ客の姿も見えないし。
店主からしたら、突然店の前にパトカーが止まってびびってるかもしれないけど。

「こんばんは………って、え」
「………え」

店主と思われる人物の姿を見て、思わず固まった。
そいつも皿を拭いていた手を止めて、俺のほうを凝視している。

「え、え、あの、いらっしゃいませ？」
「ん？あろまの知り合い？…あれ、昼間の花屋の店員さん？」
「あ、昼間ゼラニウム買った人」

待て待て待て、話を一つずつ整理させてほしい。
俺の目の前に立っている女、それは今朝腹減ったと部屋で喚いていた隣人だ。苗字は忘れた。確か名前はA。

「えおえお、お前昼にこいつから花買ったのか？」

いきなりこいつ呼ばわりしたせいか、少しだけAの眉間に皺が寄ったような気がした。

「昼間、中央通りで花屋の店員してますよね」
「あ、はい。でも副業許される職業なので」
「別にそれとか取り締まりに来たわけじゃないので」

昼間は花屋で働いて、夜は喫茶店。喫茶店を営業してる時点で、食料には困りそうにないのだが。
そして、えおえおが言う通り別に俺らはこいつに会いに来たわけでも、店に来たかったわけでもない。

「願いを叶える店って知ってるか？」
「なんですかそれ」

だろうな。