【M./S/S.P】等価交換のなんでも屋 (ページ5)

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契約ページ5

バイト先の店長から貰ったチョコレートを一口齧って、紅茶を口に含む。中々合わない組み合わせだ。
テーブルとイス、ライトしかない空間。店内にBGMなんてものは流していない。だってうるさいし。
自身のスマホで時間を確認すると、もうすぐ閉店時間だ。結局今日もここでお茶をしてるだけで終わってしまった。

カラン、と音が鳴った。

「おや、今日はもう閉店だよ」
「あんたがなんでも願いを叶えてくれるって？」

口調は荒々しく、恐らく一般人が絡んではいけないタイプの人間。紅茶から顔を上げると、そこには黒いスーツにサングラスをつけた、いかにもという風貌の男が立っていた。
全く、こんな仕事をしているから人間には慣れているけれど、私だって得意不得意の分野がある。

「願い、ね。聞くだけなら聞いてやろう」
「俺は叶えてほしいと言っているんだ。願いを聞いてほしいなんて一言も言っていない」

やれやれ、この手のタイプは―――――。

「へえ、そうかい。それじゃあ、私があんたの願いを叶えないと言ったら？」

チャキ、という洋画で聞くような音と共に私のこめかみに銃の先端が押し付けられる。どうやら本気のようだけど、そんなものが脅しになると思っているのかこの男は。
銃を突き付けられたまま、チョコレートを齧る。手に持っていた部分が少しだけ溶けてきている。

「見ての通りだ」
「そうかいそうかい。でも残念だったね。あんたに私は殺せない、そうだろ？」
「ふざけんな！俺はいつだってお前を撃てるんだぞ」
「そうだねえ、確かにその引き金を引けば一発だ。だが、あんたの命も今日中には無くなる。違うか？」

案外適当に言ったことは当たるもんだ。図星だったのか、銃を降ろした。

「……姉を、助けてほしい」
「へぇ」

まとめると、こいつの姉がこいつのボスに色々と歯向かったらしく、とうとうボスの堪忍袋が切れてしまったらしい。んで、とうとうボスが姉を殺しそうな勢いだと。

「で、結局あんたは何が望みなんだ」
「ボスを殺せ」
「大層な願いだねぇ。それじゃ、この契約書にサインしな」

契約書を差し出すと、近くにあったペンを奪うように取って名前を書き始めた。その様子をぼんやりと眺めていると、窓から赤い光が差し込んでいるのが見えた。
まずい、長時間営業しすぎた。奴らに見つかると面倒くさい。

「あんた、契約はまた今度にして」
「は？」
「サツだ」

ああくそ、もっと早く店を閉めるべきだった。