【実/況/者】ぱられる2【短編集】 (ページ3)

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雨宿り@fj ページ3

目の前を人が忙しなく行き交う。鞄で頭を守ったり、とりあえず全力疾走したり、それは様々で。

突然降ってきた雨に驚いたのは私だけじゃなかったはず。でなければ、殆どの人が傘を持ってるはずだから。天気予報どころかテレビすらつけない私はもちろん傘なんて持っておらず、近くにあった雨宿りが出来そうな所に避難していた。

みんな大変そうだなぁ。どこか他人事のように思う。いや実際他人事なんだけど。下校中だから急ぐ必要もないし。少しマシになってから動き出しても全然大丈夫なのだ。

*

どのぐらい時間が経ったのか。携帯で時間を見てみればまだ10分。雨は止むどころか更に強くなった気がする。……きがするだけだ。

このままここにいても仕方がない。帰ってすぐにお風呂に入ればいい。そう思い一歩を踏み出した途端、目の前にとある人物が現れ、声をかけられる。

「A？」

「…ふじ？」

彼、フジが傘を差して目の前にいた。ちょうどいい、入れてもらおうとしたところ、なぜかフジは傘をしまって私の隣に来た。

「なにしてんの」

「別にー？」

「傘入れてよ」

「んー。Aと相合傘もいいけど、こうやって雨宿りもいいべ」

そう言うフジの横顔を盗み見ると、どこを見ているのかわからない目線、優しそうに、嬉しそうに微笑んでいた。
その微笑みは決して私に向けられた事じゃないことを理解していながらも、どうしても照れてしまう。というより、前の台詞が紡がれた時点で私に照れないという選択肢は消えていた。

ばか、小さく呟いたはずの声は私の耳にも届かず雨音に掻き消されてく。そっとフジから視線をはずすと自然とさがる。ああくっそ。雨宿り如きで、こんな風になるなんて。フジのばか。ばか。

フジの、

「女ったらし」

嫌味っぽく言った言葉はさすがに聞こえていたみたいで、こちらの方を驚いたように見る。私は相変わらず俯き加減で前を向いたまま。