8,事件 ページ8
〜〜〜〜〜〜〜
「はぁ…」
小さなため息が出る。
なにかしたいけれど、どうにもできないじれったい気持ちが心を支配している。
話が飛んで何が起こったのか分からない方のために説明すると、今、私は病院にいる。
それも、マフィアが裏で買い取っている大病院の待合室にいるのだ。
手術中の赤いランプはついたまま。
私はそれを、ただぼうっと眺めていることしかできない。
「おい!春宮!」
「ーっ、中原さん!」
入り口から黒い車を降りて出てきたのは、私の上司だ。
「出前、怪我はねェのか。」
「…はい…、無いです。残念ながら。」
その台詞に、私の上司は眉を寄せる。
「なァに言ってんだよ手前なァ、俺がどんだけ心配してたか分かってんのかよ!?」
「……。」
「…で?何があったんだよ。手前はともかくとして、芥川と二人だった上に少数の敵だったんだろ?…こんなしくじり方したことねェだろうが…。」
私は何も言えない。言ったら罪悪感で消えて仕舞いそうだった。
察してくれたのか、もしくは聞こえなかったと判断したのか、中原さんはそれ以上何も聞かなかった。聞かないでいてくれた。
でも。
「私の、せいなんです。」
「あ…?あんだよ、何が。」
何がもなにも…
「私が組織のリーダーを殺させなかったせいで、芥川先輩が傷ついたんです。」
中原さんが小さく頷く。
「…そうかよ。…まァ、手前は彼奴のこと好きだし、自分のせいだとか思ってんのかもしんねェけどな、そりゃあ彼奴の判断ミスだと思うぜ。気ィ使ってる訳じゃ無くてよ。」
「そうじゃ無いんです。中原さんには分かりませんよ。」
…あ、言い方悪かったかな。慰めてくれたのに。
「…先輩は殺そうとしてたんです。…それを私が抑えたんです。その隙に男が銃で…。」
「で…頭部に当たったと。」
こくり、と頷く。
「最悪、死ぬかもって、先生が…。」
あの拗ねたような顔も、不機嫌な顔も、本当にたまにだけど見せてくれる少しはにかんだ笑顔も…もう見ることが出来なくなるのかな。
私のせいで。
…「樋口さん、泣いてました。銀さんは見てないけど、聞いた時どんな顔したのかな。本当、馬鹿ですね、私。」
しゃくりあげる私の背中を軽くさすってくれる小さな彼に、少しだけ安心した。真っ白な病院の壁が薄く滲んで見えた。
ーーーー事件は、あの直後まで遡る。
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【文スト】はーい、皆さんいつまでそれやるんですか、そろそろ泣きますよー
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柴犬信者(プロフ) - 芥川可愛いー (2020年4月30日 19時) (レス) id: 3b3c8d2b0e (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - 受験終わりました!また書きます (2018年3月6日 12時) (レス) id: 546fb83b59 (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - クリスマス過ぎちゃいましたね(白目)…ですが亀更新ですので、しばらくクリスマスの下り続きます、w(なんてったって今の時点でまだ前日ですしw)申し訳ないですが、お付き合い下さいませ、! (2017年12月30日 1時) (レス) id: 44660167ed (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - ふぁあああ、!!お気に入りにしてくださった方、ありがとうございます!!!投票も嬉しい限りです!駄文ながら、宜しくお願い致します!! (2017年12月17日 10時) (レス) id: 44660167ed (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - ん、あ!ありました!すみません、!外しておきました! コメント有り難うございました^^ (2017年12月17日 1時) (レス) id: 44660167ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マリモ | 作成日時:2017年3月12日 23時