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最初の頃に比べれば熟年夫婦のような空気感、とでも言うのか
例えるならばそんな感じだと思う
二人一緒に居るのが当たり前になれてるのは良いことだろう
…だけど恋人なのだからもっとドキドキしたいのも本音だったりもする
もしかしたら今もこんなに好きなのは自分だけなのか…
彼奴は以前ほど、"好き"の気持ちも落ち着いてきてしまってるのかもしれない
会える時間が減っても、お互い忙しいのもそれだけ仕事を貰えている証拠なんだから俺達はむしろ喜ぶべき
だからこそ合間の時間を見つけて互いの家を行き来するのも慣れっこで、それが普通で当然の流れともなってる
僅かでも家でまったり共に過ごせるのが幸せの一つだった
…ただ、 そういえば最近は俺が向こうに行くばかりだな
そんなことがふと、過ぎる
別にうちに来てくれないのが不満な訳でもないが、何か一つ気になりだすとどうしても、あれこれと違和感が増えていく
マイナス思考に引っ張られがちなのは俺の悪い癖だと、そういやこれも前に指摘されてたっけ
…一旦、考えるのはやめよう
今日はこの後の雑誌インタビューとラジオのコメント録りが終われば彼奴の家に行く約束をしてる
明日は本当に久しぶりに二人共一緒にオフだ
休みの前日の夜
恋人の家で過ごせるのに何も期待をするなという方が難しい話
あの細長い腕に抱きしめられながら同じベットの中で眠りについて朝を迎えたい
恋人らしい、そんな一晩を望んでも罰は当たらないはずだから
どうか
今日の仕事を全て終え、はやる気持ちを抑えながら辿り着いた高層マンション
ラジオ局を出発する際にトークアプリで連絡したものにはすぐ既読がついて「気を付けてね」とも返信がきていた
本当は寄り道をして総菜やお酒など多少買い物をしていく予定だったけど…それは最悪一旦家に着いてからでもなんとかなる
とにかく今は一秒でも早く太輔の顔を見て安心したかった
エントランスのオートロックを解除し、目的の階までエレベーターで昇る
長い渡り廊下を歩き辿り着いた家のドアの前で一つ深呼吸をした
合鍵を貰ってるからインターフォンは鳴らさない
カードキーをあて、カチャと音がしたのを確認してゆっくりとドアを開ける
「………っっ、」
中に入って一番最初に目に入ってきたもの
明らかにいつもの、俺の知ってる光景とは違うもの
良く見知った靴の少し横に並べられた女性物のパンプス
…心臓がどくん、と大きく跳ねた
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作者名：kurumi
| 作成日時：2024年10月21日 16時
