検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:12,830 hit

第78話【東條夏津】 ページ30

みんなと別れて(みんなから逃げて)辿り着いたのは車通りも人通りも少ない細い道。


嫌な予感が当たって雨が降り、空の涙が私の服をすばやく濡らす。リュックはゆかりんに渡したまんまだから、今の私は身軽だ。


必死に走っていたら、何かに足を引っかけて転んだ。


「いっつつ……え?」


体を起こし、つまずいたものを見ようと目を向けた先にあったのは――美人な女性の…corpse.


「……警察……電話……」


110番しなきゃ、とパーカーのポケットに手をかけるが、中にスマホが入っていないのを思い出す。


なら交番まで走ろう、と立ち上がった、その時だ。


「なーにしてるのかな?お嬢ちゃん」


「っ、え……?」


私の後ろ。そこから、大人の男性の声がする。


思わず振り向くと、そこには、血に濡れたナイフを持った若いお兄さんが立っていた。


「お兄さんなの?こんなこと、したの……」


標準語を使い、お兄さんの様子を伺う。お兄さんはにやっと笑いながら近づいてきた。


「そー。これ、俺がやったの。キレイなお姉さんだよねぇ」


「なんで……どうして……」


にやにや笑っていたお兄さんは、こんどはクスッと笑う。


そして、『そんなの簡単じゃん』と私の鼻先にナイフを近づけた。



「殺りたかったから。これだけだよ。サイテーだって思った?ははっ、そんな顔してるよ、お嬢ちゃんは」



「コロすってね……そこまでハードル高くないんだよ?」

そう言うと、私の腕に勢いよくナイフを刺した。どくどくと血が流れる。


「いった……!!」



パーカーを脱いでお兄さんの顔に被せる。これはただのねこだましだ。一瞬の隙をついて蹴りを放った。


が、足を取られてすっ転んでしまう。


「ぐぅっ」


パーカーは雨に打たれてぐちゃぐちゃだ。仕方なくTシャツを破いて腕に結んだ。



「かっこいー。武道でもかじってた?」


くるくるとナイフを回しながら、こんどは右足に刺した。


つづいて左腕にも。


私は二つの傷のぶんTシャツを破き、それぞれに巻き付けた。もうスポブラが見えそうなので、これが限界だ。



もうだめか、そう思った瞬間だった。


彼の声が、聞こえた。

第79話【荒巻宮】→←第77話【陸奥崎遥斗】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (7 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
設定タグ:こちらアイラ探偵事務所です。 , 探偵 , 募集企画   
作品ジャンル:ミステリー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

マリー(プロフ) - 五木さん» 作ってきます!お待ちください! (2016年9月27日 6時) (レス) id: d04a2a0312 (このIDを非表示/違反報告)
五木(プロフ) - 最深さん» マリーさんが3を作るのを待ちましょうか… (2016年9月27日 1時) (レス) id: f7b65337af (このIDを非表示/違反報告)
最深(プロフ) - お話いっぱいになってしまいました…どうすればいいですか? (2016年9月26日 23時) (レス) id: 28cca0cd0a (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴 - 五木さん» 分かりました、ありがとうございます! (2016年9月26日 22時) (レス) id: 40db855e05 (このIDを非表示/違反報告)
最深(プロフ) - 更新しますー (2016年9月26日 22時) (レス) id: 28cca0cd0a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:マリー x他5人 | 作者ホームページ:この作品の作者は画面の目前の君!君だよ!  
作成日時:2016年8月30日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。