【短編集】Forme d'amour【QK】

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祥くん早く！と僕の腕を掴んで走っていく。「時間はいっぱいあるんだから」祥くんとのデート、時間いっぱい楽しみたいの！と言って満面の笑みを浮かべた。いつもはヒールのある靴なのに、今日はスニーカーだね。デートを精一杯楽しむためかな。僕よりも幾分か小さな背中を眺めながら想像する。家でデートの為にうんうん唸りながら服装を考える姿。可愛さに1人で浸っていると、前からあっ、と声が聞こえた。「ちょ、馬鹿！！」僕の腕を引きながら、何もないところで転びそうになる彼女を反射的に引き寄せた。「……ありがと、祥くん」「もう、危なっかしいんだから」そんなに急がなくてもずっとそばにいてやるつもりなんだけどなぁ、なんて思いながら手を繋ぎ直した。/ymmt


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家に帰ると、電気の着いた部屋と乱雑に脱ぎ捨てられた靴。なんかあったんだな、と感じた。居間や寝室を探し回ると、俺の部屋の隅で小さく蹲っていた。「………いぬい」「ん、どしたの」俺が入って来たのに気付いて顔を上げた。目が赤く少し腫れていた。「……やだ」「言いたくないなら無理して言わなくていーよ」普段は生意気な彼女がいつもより小さく見えた。「頑張ってんね、偉いね」「………うん、」「明日は休もっか」「………ん、」部屋に響くぐす、と鼻を啜る音と俺の声。ぎゅっと包むように抱き締めると、止まったであろう涙がまた溢れ出した。「ごめん、」「溜め込みすぎんなって話したでしょ、馬鹿」「………ありがと」お前がどれだけ泣いても、何回泣いても、俺がずっと横で慰めてあげるから。/ini


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