浅沼家の日常10

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流石に注目を集め過ぎたということで気持ち早歩きでその場を去った2人

駐車場へ着くと、車にもたれかかってAを待っていた長男、政晴が声を掛けようとして言葉に詰まる

次兄「どうしたんだよ…………誰だお前」

長男の異変に気が付いた次男、政行が車から降りて来るや否や父親譲りのギラギラとした眼光で睨み付ける

見慣れたAは全く動じることなく、むしろ呆れ顔で眺めていたが、初対面の浅沼はピシリと体を固くした

兄妹の中で唯一父親に似た次男の学生時代のあだ名は「若頭」である

先輩刑事にもふざけて若と呼ばれるらしいが、あながち間違いでは無いとAは思う

ちなみに父親の政成は陰で生徒たちから「組長」と呼ばれている

一応高校教師だ。決してヤのつく自由業の人ではない

『晴兄さん、行兄さん、この人は私の彼氏。だから睨まないで』

まさに鶴の一声

さっきまで牙を剥き出しそうだった次兄と、それをおろおろと見つめていた長兄を一瞬にして落ち着かせた

それによって体の硬直も解け、挨拶しようと口を開いた浅沼だった

が

貴父「おい。何やってんだお前ら」

真打登場。父、政成が様子の可笑しい息子たちを見に来た

その後ろには母、菜奈子もいる

『あ、お父さんお母さん丁度良かった。この人は浅沼晋太郎さん。お付き合いしているの』

貴母「あらあら。お父さん、とうとうAが彼氏を連れてきたわよ」

貴父「…」

愛娘にいつの間にか彼氏ができていた、しかも本人が目の前にいるという状況に固まる玉城家男衆

なお、母親似の長男以外は下手をすれば通報されそうなぐらい顔が険しい

『ちょっとお父さん？兄さん？』

貴父「……に……し？」

『え？何？』

貴父「Aに…か、彼氏っ！？」

長、次兄「「東京にいる間に何があったぁぁぁ」」

浅「うわ」

カオスである

いい歳の、それも全員もれなくガタイがいい男たちが動揺し、涙を流している光景には思わず引いてしまう

この中で平然を保っていられたのは菜奈子だけだった

やはり母は強い

その後いろいろあって浅沼も無事に玉城家に打ち解け、2人は4年後に結婚し、子宝にも恵まれるのである

成人の日。この日が特別なのは実は新成人だけではない

浅沼にとってもAにとっても、そして玉城家にとってもかなり特別な一日なのであった

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