衣更くんと夏越さん。【衣更真緒】【あんスタ】［完］

フラジールな恋慕/3　side N ページ11

◇


───土曜日。

幼馴染の真緒に衝撃的すぎる"告白予行練習"をされて、一夜が明けた。

───全ッ然、寝れてない。

いつもよりも靄がかかったような役立たずの脳を少しでも起こすために、いつも通り、洗面台に行った

んだけど。


「…？ 化粧？」


二個下の妹、ひなのが洗面台の前に立って、何やら化粧をしていた。


(………なーんか色気づいちゃって。ちょっと違和感。いやちょっとどころじゃないわ)



そう思って、とりあえずひなのに話しかけることにした。


「ひなのー」
「うわぁあっ？！ おっ、お姉ちゃんっ！」


見た？と焦りながら聞いてくるひなのに頷くと、へなりと項垂れた。


「なあに、ひなの。アンタ彼氏でもできたわけ？」
「ちが…！」
「ふうん、好きな人できたんだ」
「そっ、そういうわけじゃ…！」


わかりやすすぎ。ぷっと吹き出すと、ひなのは怒って「笑わないでよ！」と頬を膨らませた。
うちのひなのは可愛い。優良物件だと思うんだよね、私は。


「あっ、そーいえばさ、お姉ちゃん」
「どうしたの？」


ひなのの言葉を耳に入れながら、私は歯ブラシと歯磨き粉を手に取り、ブラシに歯磨き粉をつけて、しゅこしゅこと洗う。


───今日、真緒お兄ちゃんに勉強教えてもらおうと思ってるんだ！


「ブッ……………？！」
「お、お姉ちゃん？！」


びっくりしすぎて歯磨き粉が飛び出た。
咽る、咽るわこれ。


「大丈夫…？ なんかあったの、真緒お兄ちゃんと」
「………いや、なんもない、けど」


───昨日の今日だぞ、これ。


急いで歯磨きを済ませて、私は親友であるあんずに連絡を取る。
昨日の今日で、顔を合わせるのはちょっと気まずくない？

…うん、気まずい。



Aあんずー
9:04
あんずAッッッ!!!! どしたのッ!!!
9:04


LINEしたら一瞬で既読が付いた。
早すぎるて、親友よ。


Aいや、今日暇かなぁって
9:04
あんず全ッッッ然!!!! 暇だよッッッ!!!!!
9:04
Aあ、ほんと? じゃあ今日一緒にどっか行こうよ
9:05
あんずもちろん行くに決まってるじゃん!!!!!!
9:05



とりあえず、現実逃避はできそう。飛び散った歯磨き粉を拭きながら、息を吐いた。


◇

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