君に触れたい (ページ29)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:8,082 hit

29、エミ視点ページ29

私は、まだ、あなたを
「ママ」と呼んでいません…

その言葉が頭の中をグルグルと駆け回る。

捕まえられそうで、捕まえられない言葉。

意味がわかるのに、意味がわからない言葉。

怜｢やっぱり…｣

エミ｢怜、さん…？｣

怜｢紫織の本当の母親は
ヴィオレッタさんだったんだよ。
だって、あんなに似てたんだから｣

カナエ｢そんなこと、有り得るわけ…｣

光黄｢有り得るよ｣

それまで黙っていた光黄くんがポツリと呟いた。

健水｢どういうこと、なん…？｣

光黄｢俺、紫織と婚約しないかって当主に言われてて…｣

光黄くんと、紫織ちゃんが、婚約？

でも健水くんは、紫織ちゃんのことを…

光黄｢当主が婚約を早く進めたがっている理由は
たぶん、ヴィオレッタさんが関係してると思う｣

真咲｢でも光黄くんには、彼女が…｣

光黄｢うん。別れるつもりはない。
でも、紫織を見捨てることも、できない…｣

なんで、こんなことになっちゃったんだろう…

誰が悪いの？

悪い人なんて、いるの？

なんで、こんなにも心が苦しくなるの？

なんで、紫織ちゃんが
独りになるようなことばかりが起きるの…？

紫織ちゃんが何をしたって言うの…？