ムラサキ__5 ページ5
「……彼氏って、え、っじゃあ……」
驚いてしどろもどろ話す俺に、
「……浮気、だよね」
弱々しく言うA。
______浮気。
その嫌に生々しい響きに、俺は思わず顔を歪めてしまった。
「……私ね、知ってたんだ。浮気してるって」
「えっ……？」
「私の彼氏と女の子が屋上に出入りしてるって聞いちゃって……人ってどこで見られてるかわかんないよね〜」
淡々と話しながら、バカだよねと笑うA。
目がまだ潤んでいて明らかな作り笑いは、
儚い雰囲気を放っていた。
だから、Aは屋上に噂を確認しに来たんだと、
俺はすぐに察した。
そしてその噂は本当で、現実を目の当たりにして涙を流したのだ。
「ごめん、こんな話させてしまって…辛かったな」
あまりにも可哀想で、俺はとりあえず慰めたくて
でも言葉じゃ上手く表せなくて、
思わず、Aの頭ををポンポンっと撫でた。
だけど彼女はビクッとして、
「……あんまり触らないで。彼氏、いるんだから」
そう低いトーンで言うと、俺から少し距離をとった。
正直ショックだった。俺はただ慰めただけなのに…。
あんな光景を見た後なのに、
いくら自分が裏切られても自分は決して裏切らない。
そんな彼女の行動は、俺には全く理解出来なかった。
正直、バカだと思った。
.
だけど、
人間は疑問に思ったり、よく理解出来なかったことがあれば
知りたくなる生き物なのか、
俺は更に、Aに興味が湧いていた。
思い返せば、このときから既に
俺はAに惹かれていたのかもしれない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 313人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
林檎 - すごく素晴らしい作品でした！続編楽しみにしています。お風邪にお気をつけて (2023年3月28日 18時) (
レス) id: 84e97ac5a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mano | 作成日時：2022年4月5日 1時
