【ヒプマイ】月が満ちる時に。2

story66 ページ20

『あ…わかり、ました…』



心做しか顔の赤い銃兎を見て私は咄嗟に返事してしまう。

すると銃兎はふっと私から視線を外した。



左馬刻｢…銃兎、早く車出せ｣


銃兎｢はいはい、わかりましたよ｣



左馬刻の低い声に銃兎はいつも通りひょうきんに返事する。

いつも通り…だよね？銃兎が照れるなんてまさか…ね？

銃兎は理鶯の隣、運転席に乗り込み車を発車させた。



左馬刻｢…｣



一方私は窓の外の景色へガン飛ばしている左馬刻を見つめる。

何怒ってるんだろう…、聞いたら教えてくれるかな、



『ねぇねぇ、左馬刻』



できるだけ前の2人に気づかれないように小さい声で呟いて左馬刻をつつく。



左馬刻｢…んだよ｣


『なんか怒ってるの？』


左馬刻｢…あァ！？｣



怒りながらも私の小さい声に応じて左馬刻も小さい声で返してくるのが可愛い。



『私、ちゃんと今日女の子の格好してきたのに。

…久しぶりにメイクだってしたんだよ？』


左馬刻｢は、？｣



私の言葉に反応した左馬刻は急に私の頬を両手で包んで自分の顔の前に引き寄せた。



『なっ、しゃまひょき…！』



左馬刻の手のせいで上手く話すことができない。

離してよ、と彼に伝えるがきっと上手く言語化はされていないだろう。



左馬刻｢…か…わい｣


『ん？なんて？』



私の抵抗に負けたのかいきなり手を離してまた窓の方へ顔を向けてしまう左馬刻。

しかも今なんか言ってたよね？なんて言ったんだ？



『なんて言ったの？今』


左馬刻｢…可愛い、っつったんだよ！』



…は？

いや、この顔は照れてるよね？顔真っ赤だもん。

銃兎は見間違いかもしれなかったけどこれは完全にリーチでしょ。

左馬刻、こんな顔するんだ…



『左馬刻、こっち向いて』


左馬刻｢…｣



私の問いに答えない左馬刻に私はやり返す。

彼の頬を両手で包み、私の方を向かせる。



『…可愛い』



左馬刻｢…！！お前…！｣


『左馬刻様？そろそろ不機嫌だった理由を教えてくれないかな？』


左馬刻｢…出かけたかった｣


『ん？』



私は正直になった様子の彼の頬を解放する。



左馬刻｢2人で…出かけたかったんだ｣


『…左馬刻、』



え、な、なんで…？それはどういう意味！？

…私はなんて答えればいい？

“わたしも”…いやちがうよね？

“そっか、”…そっけないよね？



『あ』



銃兎｢さっきから随分と楽しそうですね？A｣


理鶯｢A、左馬刻｣



2人の声が重なった。

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