死ぬということ。 ページ10
.
｢あ？｣
おお、怖い怖い。
岩泉にだって殺されてもいい。
そんなような言葉を言っただけなのに。
なんなんだ、一体。
舌打ちをかまし、頭を掻く岩泉が、ため息を吐いて、また、口を開く。
｢……大体、お前はなんで昨日、死のうとしたんだよ｣
嗚呼、つまりはあれか。
昨日じゃなくても良いだろうとかいうやつか。
んー。理由っつってもねえ。
あ。
｢……ねえ、知ってる？
9月1日って、中高生の死者数が、最も多い日なんだって｣
ニンマリと笑って、岩泉に得意げに説明すれば、岩泉は今までの、少しイラついた態度を変えて、素っ頓狂な声を漏らした。
｢……は？｣
｢知らなかったでしょ？他にも死のうとしてる子がいるって分かってる日に死ねるのは、やっぱ安心感あるよ｣
身振り手振りをつけて自慢げに言えば、岩泉は眉間のシワを深めてしまって。
あらら。
ちょっと調子乗りすぎた？
そう思いつつ岩泉を観察していれば、何を思いついたのか、口を半開きにして、すぐに、弧を描いた。
｢お前でも、死ぬのは怖かったんだな｣
……は？
｢だってそうだろ？皆と一緒に死にたい。
一緒なら怖くない。安心できる。
はは。お前、なんだかんだ死ぬの怖えんじゃねえか！｣
大笑いして、腹を抱える岩泉の言葉が、異様に脳にへばりついて。
岩泉の笑い声が、とてつもなく腹が立つ。
｢思えばお前、昨日も屋上の扉開けっぱだったもんな！しかも放課後からしばらく経ってたのにずっとフェンスに座りっぱで！なんだお前。意外と可愛いとこあんじゃねえか｣
"意外と可愛いとこあんじゃねえか。"
白い歯を見せて、あぐらをかきながら、足首に両手を置いて。
思いっきり、満面の笑みを浮かべて。
｢……意外とは余計だクソ泉！｣
胸ぐらを掴んで、怒鳴り散らす。
女子らしさの欠片も無い。
｢それに！怖くて昨日にしたんじゃない！ただ、ただ……！｣
｢……ただ？｣
眉間のシワが無ければ、意外と整った顔の岩泉が、安定した、少し低い声を出して。
喉が詰まる。
なんて言おうとしたんだっけ。
何を言おうとしたんだっけ。
｢ちゃんと言え。ちゃんと自分の言葉で｣
なんなんだ。
胸ぐら掴まれてる癖に。
自分の方が不利な立場な癖に。
これから、私を殺すかもしれない癖に。
なのに。
｢……前髪上げんの、やめて｣
男らしい手が、前髪をかきあげて。
おでこに、手が置かれて。
はは。これじゃ、嘘がつけない。
｢死なせてみなよ、私を｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 477人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー！ (2023年2月18日 22時) (
レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです！ (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ！こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます！感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります！本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね！気付きませんでした！今度検索してみますね！コメントありがとうございます！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お水。
| 作成日時：2019年1月12日 17時
