もう分かってるだろ。 ページ35
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｢……そっか｣
はは、と笑って、私の頭に手を置いてきた。ドクン、と心臓が踊る。
やめてよ、諦めようとしてんだよ、こっちは。
そんな意味も込めて腹に一発拳を入れれば、ぐえ、と唸って、手を離した。
恨めしげに私を見る花巻だが、すぐに真面目な顔に戻って、困ったように、眉を下げた。
｢……お前も、もう分かってんじゃねえの。
どうして岩泉がそんなことを言ったのか。どうして、俺に頼み込んでまで、お前の恋を叶えようとしたのか｣
諭すように、ゆっくりと。
嗚呼、嫌だよ、気付きたくない。
だって、だって。
岩泉は、私の死に方を一緒に考えてくれる、良き理解者だったはずでしょう？それが、一気に崩れ去るの？
｢……で、も｣
｢昨日、岩泉に直接会って、報告したんだよ。お前を振ってきた、ってな。
そうしたら、彼奴、何やらかしたと思う？｣
分かんないよ、そんなの。
岩泉が、分からない。あんな表情、見せたことなかったじゃんか。
今までも、今も、同じ距離感だと、ずっと、思い込んでいたのが。
急に、現実を見せられた感覚。
｢ふざけんな、湯川泣かしやがって、って殴りかかられた。胸ぐら掴まれて。でも、選手殴るなんて、彼奴は優しすぎて出来ねえから。
苦しそうに、辛そうにして、俺の胸ぐら掴んだまま、こう言ったんだ。
"やっと、諦められると思ったのに……！"
泣きそうだったよ、あいつ｣
目を、見開いた。
嗚呼、なんてことだ。全部、全部を、今、一瞬で受け入れてしまった。
納得、せざるを得ないでしょ、そんなの。
だって、私は、その感情を知ってる。
花巻への想いが一度でも実る前、私が、少し諦めを含ませていたとき。諦められると思ったのに、なんでまだ好きでいるんだ、と、自分を呪った。
……嗚呼、もう。
｢……私、は｣
｢今日、部活オフ｣
じゃあな、なんて、私が言いたいことを無視して、勝手に部活の予定だけ零して去ってしまった。
ピンクがかった髪が、少し揺れて、その後ろ姿を眺める。
急いで、後ろを追って、そっと、告げる。
｢……ありが、とう｣
ありがとう、私と、付き合ってくれて。
一度でも、私の告白を、受けてくれて。
今、岩泉の想いを伝えてくれて、分からせてくれて、
――ありがとう。
｢……おう｣
短く返事をして、また歩き出した花巻。
私は、呼吸を整え、自分のクラスへと戻り始める。
雲行きが怪しい空を見上げて。
放課後、教室で。
少し、話をしませんか、岩泉。
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー！ (2023年2月18日 22時) (
レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです！ (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ！こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます！感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります！本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね！気付きませんでした！今度検索してみますね！コメントありがとうございます！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年1月12日 17時
