16話 ページ17
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面倒だ。
俺の脳を支配しているのはその３文字だけだった。
部下に運転させている黒のBMWの後部座席に乗りながら、憂鬱な気持ちで窓の外を眺める。
辺りはもうすっかり明るく、昼時だ。休憩に来たのであろうOLらしき二人組が、女子ウケの良さそうなカフェに入っていくのが見えた。
Aちゃんも、あんな風に過ごしていたのだろうか。
そんな考えが頭によぎるが、「会社を辞めろ」と言った時の反応から、昼休憩があったのかすら怪しい環境だったことは間違いない。
だが、きっと彼女の理想とする人生は、ああいうものだったのだろう。
それを大きく変えた張本人が自分であることを自覚しないまま、俺はAちゃんの上司への憎悪をより一層高めるのだった。
…………………
…………
……
「こちらのアンティークなど、なかなか手に入らないものでして。貴店の雰囲気にもあったデザインですので、ぜひ置いてみてはいかがでしょうか」
茶色の革張りソファに腰掛けながら、写真の載ったスクラップブックと見合い、特に好きでもない家具のプレゼンをする、この作業のいかに面倒なことか。
マフィアといえど、金は必要だ。マフィアだから、なんて理由で金が湯水のように湧いてくなら苦労はしない。基本的な収入はほとんど窃盗のようなものだ。
しかも、俺の組、”アカギ”では、法に触れるような取引を一切禁じている。命を賭さねば得られないような不安定な収入には、いくつ人間がいても足りないのだ。
「うーん、どうだろうね。新しいタイプの雑貨を置いてみてもいいとは思うのだが…」
だから俺は、副業としてこの会社を経営している。今じゃこういうやり方は常套手段だ。
俺は北欧系の家具や雑貨を主にした卸売業をやっている。3年前に築いたばかりの新企業。
最近は大手家具メーカーとの契約も取れ、会社として経営が安定してきたため、信用できる部下に管理を任せている。
まあ、３年間の間に他の縄張りの連中に舐められてしまったが。
ただひたすらに力で押さえつける時代はもう終わりなのだ。そんな不確定なものにいつまでも縋っているから、この街はどんどん衰退していく。
俺は両親の二の舞にはならない。腹から血を流し、赤く散っていく事だけがこの稼業ではない。
俺はあいつらみたいに、生き急ぐような真似はしないと決めているのだから。
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けんまおし1016(プロフ) - とてもおもしろいです！少し文章の間を広くしてくれれば読みやすいと思います！ (2022年8月17日 19時) (
レス) @page3 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - コメント失礼致します！！読んでて凄くきゅんきゅんしました、！！！素敵な作品を本当にありがとうございます😭💕💕 (2022年8月14日 5時) (レス) @page21 id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
ノンレム睡眠 - 前々から気になってた作品で読んでみるとど好みストレートでびっくりしました🙃 これからも愛読させていただきます！神作ありがとうございます🙌❤ (2022年8月12日 18時) (レス) @page21 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ir | 作者ホームページ：http://manaaa
作成日時：2022年7月16日 22時
