Forget me not 【勿忘草】 (ページ10)

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・Ep9 ページ10

私はその後、1人電車に乗って、

家に帰った。

でも、奏の想いにまだ信じられない私がいて、

２階の自分のベットで放心状態だった。

なんだか魂が抜けた。

そんな表現が合っていたと思う。

そんな時、１階の電話が鳴ったんだ。

２階にいて、放心状態の私は

当然電話に出る気力なんてなかった。

私が振られたわけじゃないのにって今では思う。

１階にいたママがあの時は電話に出た。

しばらくすると、

母「Aー！
奏君のお母さんからよー！」

って１階から呼ばれて、

急いで電話を替わると、

奏母「あ、Aちゃん？」

『あ、はい。
こんばんわ。』

奏母「うん、こんばんわ。
ねぇ今日、奏と遊んだよね？」

『はい』

少し焦った声だった奏のお母さん。

奏母「どこで遊んだか、教えて？」

『海ですけど…』

奏母「海？
電車で行ったの？」

『はい…、あの、奏から聞いてませんでしたか？』

奏母「ええ。
ねぇ、一緒に帰ってきてないの？」

『へ？』

奏母「奏、帰ってきてないの、家に…。」

『え！』

奏母「奏と最後に分かれたのはいつ、どこ？」

『夕方、夕日が沈む前です。
場所は、海です。
奏、夕日が沈んだら、１人で帰るからって言ってました。』

奏母「夕日はもうとっくに沈んでるじゃない！」

『・・・』

奏母「あ…、ごめんね。
教えてくれてありがとう。
切るね…。」

ブチっ。

電話が一方的に切られて、乾いた音がした。

体の力が抜けて、

受話器を床に落としてしまったのを今でも覚えてる。

母「A、どうしたの。」

『奏、帰ってきてないんだって。』

母「え…。
どうして？ケンカでもしたの？」

『してないよ…。
ママ、どうしよう…。』

父「とりあえず、ママ。
奏君の両親と一緒に奏君を探そう！」

母「そうね。
A、お風呂とごはん、早く済ませて、寝なさい。
明日の学校の準備忘れずにね？」

『私も行きたい！』

父「ダメだ。
Aまでいなくなったら、元も子もないだろ！
ママ、行くぞ。」

母「うん…。
A、心配しなくてもきっと見つかるわよ、奏君。」

そう言って、２人は家を出ていった。

大人は知らない。

私達はケンカしたんじゃない。

男女の関係になっちゃったって。