Forget me not 【勿忘草】

・Ep4 ページ5

？「おっし！
じゃー、帰ろう！」









そう言って、

私の壊れたサンダルも持って、

路地を抜けていく彼。









あぁ、荷物持たせちゃってる。









若干、生きた心地がしない。


でも、そんな事、お構いなしに

彼は風を切って、歩いていく。


夜の街並みを堂々と。









頼もしい背中についていくと、

彼はいかにも高そうなマンションの前で止まった。









？「ここ、俺ん家！」








私に一言告げると、

前に向き直り、マンションの中に入っていく。









この人……、世間一般で言うヤンキーってやつだよね？

そんな人間には似合わない、このマンション。


この人、何者なの？









エレベーターで向かう先は、最上階。









彼は、家のキーを出し、鍵を開けると、

私をレディーファーストで先に家に入れてくれた。









？「さー！上がって！
汚いけどさ！」









本当なら『お邪魔します』なんだけど、

言えないので、

一礼してから入る。









彼に通されたリビングは、

だだっ広い部屋だった。


それでもって、綺麗だった。








散らかってなんかなくて、

モノトーンで統一された部屋。


いかにも、おしゃれな意識高めの男性の部屋。









？「ほら、つったってないで、お風呂！
入ってきなよ！」









バスタオルを私に渡して、

お風呂場の場所を教えてくれた。









え、いいのかな……。

お風呂なんて入らせてもらって。









若干、戸惑っていると、

表情で心情を読み取ったのか、









？「ゆっくり入ってくればいいよ。
ずっと、リビングで待っててあげるから。」









と、優しく微笑む目の前の男。









よくよく考えたら、

私はサンダルが壊れたせいで、ずっと裸足で地面を歩いていた。


さすがに、このままでは汚い。









私の顔を覗き込む彼に、

1つ、頷いて、



私はお風呂に入った。

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