Forget me not 【勿忘草】 (ページ14)

今日:1 hit、昨日:19 hit、合計:29,080 hit

・Ep13 ページ14

封を開ければ、

そこに広がるのは、男の子にしては綺麗で落ち着いた字。

奏の字だ。

【Aへ

今、Aがこれを呼んでるってことは、

僕は世間からかくれんぼできたってことだよね。

急にいなくなってびっくりした？

きっと、Aはこの手紙を見ながら、後悔の涙を流してるんでしょ？

告白、断らなきゃよかったって。

自分のせいで奏はいなくなったって。

どうせ、俺のお母さんがAにひどい言葉浴びせたんでしょ？

あなたのせいで奏は死んだんだ！とか。

でも、A。

Aが苦しむことじゃないよ。

Aが悔やむことなんて何もない。

Aを海に誘ったのは、

告白して、後悔にないまま消えたかったから。

俺、病気なんだ。

末期性の。

だから、今、こうやってかくれんぼしてなくても、

近い将来、俺は強制的に消えてしまう。

病気で苦しんだ上に、死ぬっていやじゃん？

苦しんで、結果生き上るならまだしも、死ぬってわかってるんだよ？

そんな闘病生活なんて耐えてらんないよ。

だから、Aの告白がどうとか、

海に行ったのがどうとか関係ないよ。

俺は俺の意志で海の中に隠れたんだから。

この勝負、絶対俺の勝ちだよね(笑)

とにかく、Aは何も悔やまないで。

でも、嘘なんて言ってないから。

俺は、君に会った時からずっと君が好きで仕方なかった。

病気だって、君といれば治るかもってバカみたいなこと考えてた。

ごめんね。

俺の事情に巻き込んで。

こんな立場の自分が言っていいことなのかわからないけど…、

A、絶対誰かの隣で幸せになってね。

大好きだよ。

　奏より】

手紙に私の涙が零れてしまう。

それと同時に分かる奏の涙の存在。

奏、これ書くとき泣いたんだ。

明らかに手紙のところどころに涙の乾いた後。

その痕は、今ではカラカラになって、紙をちょっとだけ変形させている。

悔やむことない。

そう書かれてあった手紙。

でも、あんなに仲良くしといて、悔やむなんてできない。

かくれんぼってなに？

私が鬼なの？

それとも捜査を続けている警察？

もうわかんないよ、奏。

なんで病気のこと言ってくれなかったの？

たくさんの疑問の答えを答える人はもう海の藻屑だ。