ある日の夜 ページ19
* ※一部、血の表現があります。
草木も眠る丑三つ時。
黒咲はいつも通り寝床に着き、夢を見ている。
季節は冬。クリスマスという一大イベント真っ只中である町は色とりどりのイルミネーションや陽気な音楽に包まれていた。
その町のシンボルと言っても過言ではない大きなクリスマスツリーの前で黒咲は待ち合わせをしていた。服装はいつもの和服ではなく、洋装である。
なぜなら待ち合わせの相手は女性なのだから。
腕時計の時刻を確認すると待ち合わせ時間より少し前であり、黒咲の几帳面さがよくわかる。
すると目の前に黒髪ロングの女性がこちらに小走りで走って来た。
「ごめんね···!電車が少し遅れちゃって···」
よく漫画にあるようなセリフだが黒咲はさも当たり前かのように、「いえ、平気ですよ」と返す。
「それにしても意外だったな〜。藤丸くんが私の予定に付き合ってくれるなんて」
「貴女がイルミネーション見たいって言ってきたんでしょう···それもしつこく」
まるで恋人かのように会話を続ける二人。
黒咲はこの時「このまま時間が過ぎなければいいのに」と思っていた。
それもそのはず、黒咲はその女性のことを好いていた。
向こうからは「そっけない」だの「塩対応」だの言われるが、それはただ単に好きであることがバレてしまうと思っているためであり、実際はもっと隣にいたいと思っていた。
すると女性が黒咲が着ているコートの袖をくい、と引っ張った。
「ねぇ···藤丸くん」
·
「どうして助けてくれなかったの?」
その瞬間、周りの風景が黒くなった。
色とりどりのイルミネーションも、ケーキを売り付けている販売員も、ブレーカーが落ちた時のようにブツンと黒くなってしまった。
そして女性にも変化が現れた。
袖を引っ張った白くて細い指は血で真っ赤になり、顔の造形も崩れ始めた。もはや人間の顔ではない。
黒咲は手を振りほどこうかと思ったが出来なかった。
体が動かないのだ、まるで石になったように。
そして女性の血みどろの手が黒咲の顔に触れようとした時──、
「───っはぁ、!」
目を覚ました。
嫌な夢だった。
黒咲は汗でぐっしょりと濡れた体でゆっくりと寝床から立ち上がると寝床の近くにある一つの写真立てに話しかけた。
「···貴女のこと、話した方がいいんでしょうか」
写真立てには先程の女性と黒咲が写っていたが、何も答えてはくれなかった。
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mamoricco(プロフ) - シベリア送りにすんぞさん» そう言って貰えてとっても嬉しいです!これからもどんどん成長していく店長を見てください! (2022年10月2日 22時) (レス) id: c988de8f5d (このIDを非表示/違反報告)
シベリア送りにすんぞ(プロフ) - 続編ありがとうございます🎉いつも読んでいて、語彙力が凄く、それに話の作り込みがとても素敵で面白いです!更新頻度速いですが、気温も低くなってくるので御体も気を付けてください🙌応援してます!長文失礼しました! (2022年10月2日 21時) (レス) id: 2d0c104609 (このIDを非表示/違反報告)
mamoricco(プロフ) - 舞夢さん» 失礼致しました。フラグ、外させていただきました。 (2022年10月2日 1時) (レス) id: c988de8f5d (このIDを非表示/違反報告)
舞夢 - オリフラ立ってますよ (2022年10月2日 1時) (レス) id: 39006a8225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mc | 作成日時:2022年10月1日 23時