［普通］って何？ −3−

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「……本当は…話したかった。」


樹『うん。』


「ステージに立って気持ちよさそうに
歌ってる姿カッコよかった。」


樹『うん。』


「でも、そんな壱馬くんを
他の人たちがキャーって見てる姿を
見るのが嫌だったの。」


樹『うん。』


「あーここにいるみんなが
壱馬くんをかっこいいって思ってるんだ。とか、
ここに壱馬くんの彼女がいるのかな…
彼女に向けて歌ってるのかな…なんて思うと…
…胸が苦しくて…辛くなって……。」


樹『うん。』


「体育館から出たら知らない男子に
声をかけられてね…すごい嫌で怖くて…
誰か助けてーって思ったら
壱馬くんの友達が助けてくれたの。」


樹『うん。』


「すごい助かったんだよ。本当に感謝してる。
でも……助けてくれるのが壱馬くんだったら
もっと良かったのにって…思ったりもした。
お友達には感謝してるんだけどね…。」


樹『うん。』



本音で話してと言われて…

本音で話そうと意気込むと勝手に口が動き出した。



いつものように樹は聞き役になって

うんうんって相槌を打つだけだった。



「私ね、壱馬くんが好きなんだと思う。」


樹『うん。』


「樹や北ちゃんとは違うの。全然違うの。
こんな気持ちになるの初めてで…怖い。」


樹『ふふっ。良かった。』


「よかった？」


樹『うん。ちゃんと自分の気持ちに
気付けて良かったね。』


「…。」


樹『俺はだいぶ前から気付いてたよ？』


「えっ！？なんで？」


樹『なんでって。笑
A、壱馬くんの話する時だけ
声のトーン明るくなるし楽しそうだし。
もちろん喧嘩した時はかなり落ち込んでたし。
Aって物凄くわかりやすいじゃん。』


「…。」


樹『きっと、遥香ちゃんとかも
気付いてるんじゃない？』


「そうなの？」


樹『いや、分からないけど多分。
俺よりもAのそばに居るんだし。』


「…。」




私は…私の気持ちに今日気付いたのに。

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