友達なら ページ28
「はい!」
「ちょ、ちょっと」
腕を捲って差し出す私と、それを押し返そうとするミンハオ君。暫く押しては返してを繰り返していると、ミンハオ君は諦めたように手を離した。
「Aさん、こういうことは…」
「ミンハオ君あのね、私上手く言えないんだけど」
ミンハオ君がかつて話してくれた大切な人との「共存」の夢。その時、やけに切なそうな顔をしていた理由が分かった。
約束の相手が大切だからだけじゃない。ミンハオ君は、純血である自分の存在が夢の実現を否定していると思ってたからだったんだ。
でも私は、そうは思わないよ。
「確かに今の吸血鬼優生思想の人達みたいなやり方はやめて欲しいよ?でもミンハオ君が必要なら、私は血を吸われてもいい」
「どうして?」
「だって私達は友達でしょ?友達が困ってたら助けたいって思うよ」
私だけじゃない。スンチョル先輩やミンギュやソクミナだってそう言うと思う。皆がミンハオ君のことを好きで、きっとミンハオ君も皆のことを好きでいてくれているから。
「共存って言葉はなんか仰々しいけど、要はお互い助け合って生きていこうってことだと思うし!」
それが血だったとしても、私は助け合って生きる道を選びたい。それを聞いてぽかんとした表情だったミンハオ君は、ほどなく静かに笑った。
「ずっと思ってたけど、Aさんって本当にまっすぐな人だよね」
「そうかな?」
「うん。そんなストレートに伝えられると面食らう」
そう言うミンハオ君は、いつもの余裕そうな表情ではなく、どこか照れたような顔。初めて見る表情だった。
「ストレートなのはミンハオ君もだよ。だから私もちゃんと思ったことは伝えたほうがいいのかなって」
「…そっか。ありがとう、嬉しいよ」
ふわりと笑う姿が木漏れ日に柔らかく照らされる。本当に絵になるなぁとぼーっと考えていると、突然きゅっと腕を掴まれた。
「でも」
「!」
さっきの笑顔と打って変わって少し声のトーンを落としたミンハオ君は、掴んだ私の腕をぐっと引っ張った。
「気持ちは嬉しいけど、簡単に血を吸われていいなんて言わないで。人間にとっても血は生命線でしょ。軽い気持ちで差し出していいものじゃない」
「わ、分かったごめん」
少し強い言い方だけど、ミンハオ君はいつも真剣で真っすぐ。私のことを心配してくれているんだ。
その優しさと、掴まれた腕から感じるミンハオ君の力強さになぜか心臓が波打っている気がした。
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作者名:ゆきこ | 作成日時:2025年8月26日 1時


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