五話 ページ6
「…沖田くんのばか…きらい…」
「…なんかあったのかよ?」
「ひゃっ」
思わず驚いてしまった。…振り向くと剣道着姿の土方くんが立っている。部活の途中だったのか彼の髪は少し汗で張り付いていて、イケメンだなぁ、と変なところで感心してしまった。
「…な、何でもないよ。土方くんこそ、どうしたの?」
「いや、休憩だ。飲みもんが足りなくなったから買いにな。藍澤はもう帰るのか?」
「うん。そろそろ帰ろうかなって。…沖田くんもすっごく元気だったし」
先程のことを思い出して思わず拗ねた様な言い方になってしまった。そんな私を見てか、土方くんは飲みもん奢ってやる、と苦笑いをする。
「えっ、さっきももらったしいいよ。逆に私に奢らせて。さっきのお礼として」
「…男が女に奢られるのなんて、だせえから」
言っていることはとっても男らしいのに何だか可愛い土方くんに吹き出してしまった。…くすくす笑っていると土方くんが笑うな、と少し赤くなりながら私の頭をくしゃくしゃにする。
「きゃっ、ふ、ふふっ。でも、だってさっきの、土方くん、なんだか可愛いかったんだもん。ふふ、っ」
「……お前の方が可愛いだろーが」
「…っ!…さっきの仕返しだね?」
「やられたらやり返さねぇとな?」
「うわぁ!土方くん大人気ない!」
んだと、とまた私の頭をくしゃくしゃにしようとするので、お返しに今度は私が土方くんの髪をくしゃくしゃにしてあげた。
「…ぼさぼさでも、かっこいいなんて不公平だ」
ぶんぶんと犬の様に頭を振るとぼさっとしてしまった髪が、あら不思議、元通りになってしまった。
「…土方くんってワンコだったの?」
「あ?…ったく、ふざけたこと言ってねえでそろそろ帰れよ。暗くなっちまうぞ」
「わ、もう帰らなきゃ。土方くんは部活、頑張ってね」
「…おう」
鞄を肩に掛けてばいばい、と振り返ると土方くんが何かを投げた。見るとそれは缶ジュースのようで、お汁粉と書かれたデザインでやはり少し暖かった。
「…カイロ、やるよ」
「…ありがとう!あ、じゃあ私も」
鞄から財布を出して百円玉を自販機に入れる。そしてホットと書かれたコーンスープを押した。それを土方くんに渡す。
「お礼、です」
「…はっ、俺はこれから体動かすんだから余計暑くなっちまうだろ?」
あ、と私が言うと土方くんは面白そうに笑った。そしてプルタブを上に上げて一気にごくごくと飲み干す。
「…美味かった、ありがとな」
…やはり土方くんは、とってもいい人だ。
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光華(プロフ) - お疲れごはん、リアルタイムで楽しく読ませていただいてます!こちらも面白いです!私は完全に土方さん推しなので、土方さんに落ちないかな((殴 どちらも更新楽しみにしてます! (2020年6月6日 22時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マピト | 作成日時:2019年12月6日 22時