十話 ページ11
荒く息を吐きながら沖田くんから離れようと机に手を着いた。そんな私をジッと見るだけで動こうとしない沖田くんを少しだけ睨む。
…好きじゃないのに、こんなことするなんて。
やっぱり沖田くんは昔から変わらない。私の事をいじめるのが好きな私の苦手な人だ。…でも、沖田くんのあの笑顔だけは、苦手じゃないかも、しれない…なんて。
「…台詞、出来なかったら今と同じことするからな」
「…っもう帰るから、どいてっ…」
鞄を掴んで教室から出る。やっぱり沖田くんなんかきらいだ。ずっと、だいきらい。
しばらく廊下を歩いてふと窓を見ると、明かりが見えた。私の記憶が正しいなら…あそこは道場だった気がする。…土方くん、いるかな?
上履きを下駄箱に閉まって自転車置き場とは反対方向の道場へと向かう。…少し、顔を見るだけ。土方くんの邪魔はしたくないから。そっと覗くと土方くんが竹刀を振っているのが見えた。他の部員さんは居なくて土方くんだけが、そこに居る。
教室に居る土方くんとは違って竹刀を振る土方くんは厳格な、話しかけちゃいけない様な雰囲気が出ている。少しの間見ていると、土方くんがこちらをいきなり振り向いたので、見学の時間は突然終わりを迎えることになった。
「…藍澤か?…どうした、こんな時間に」
「えっと、沖田くんとの…練習。終わったから」
「…大丈夫か?」
心配するような土方くんの目に私は慌てて頷いた。毎度毎度土方くんには心配させてしまっている。もう俺も帰るから、と土方くんが言ってくれたので道場の前で座って待つことにした。
「…わりィ、待たせた。総悟の奴になんかされなかったか?」
「や、ええと…うん。大丈夫…」
さっきあった事をそのまま話すなんてことは出来なくて、言葉を濁す。土方くんには、なんとなく…知られたくない。
「…なんかされたら、言えよ」
手を伸ばされて、少し身構えてしまうと土方くんは落ち込んだ様な、困った様な目で私を見つめた。
「…俺に触られんの嫌か」
「…沖田くんに、髪引っ張られたのがトラウマで」
「じゃあ、優しく、触ってもいいか?」
「…ん。いいよ」
どこをだろう?と思っていると優しく首を撫でられてびっくりした。頭かなにかだと思ってたから少し、かなり意外だ。
「や、ひじ。ひじかた、くん?な、に」
「…猫みてえで。つい」
「……」
…少しムッとしたので、土方くんの腕に爪を立ててみると、何故か嬉しそうに笑われた。
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光華(プロフ) - お疲れごはん、リアルタイムで楽しく読ませていただいてます!こちらも面白いです!私は完全に土方さん推しなので、土方さんに落ちないかな((殴 どちらも更新楽しみにしてます! (2020年6月6日 22時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マピト | 作成日時:2019年12月6日 22時