一話 ページ2
「…おら、だらだらしてんじゃねぇ。さっさと校内案内行くぞ」
「あ、そのことなんだけど大丈夫だよ。他の子に教えて貰うことになったんだ。わざわざありがとう」
…まじか。手間が省けたと喜ぶべきなのか、国語の成績がプラスされなくなったのを嘆くべきなのか。だが貴重な昼休みを使わなくて済んだのは俺にとって好都合だった。
「お前に同性の友達なんか出来るわけねぇだろィ?Aチャン?」
にやにやとした笑みを浮かべる総悟が近づいて来たと思うや否や、藍澤に話しかけた。その目はガキが面白いもんを見つけたときのようにきらきらと輝いている。だが驚いたのがその総悟を見たときの藍澤の反応だった。
先程の凛とした笑みから一変、ガタガタと震え瞳から涙をぼろぼろと溢し始めたのだ。
「お、おい。大丈夫か?」
「…っ、や、な、なんで沖田、くんが…っ」
怯えている様な藍澤の反応を楽しむ様にゆっくりと近づいて来た総悟は、俺の後ろに隠れようとしていた藍澤の長い髪を優しく掴んで優しく笑った。
「そりゃあこっちの台詞でィ。久しぶりに見たかと思ったらこんな風になっちまうなんてねィ」
「やっ…!」
藍澤の顎を掴み、桃色の唇に指を這わせる総悟の顔はまるで悪魔の様だった。藍澤はというと怯える様に震えている。
「…っ、わ、私あれからがんばって、変わったんだから…っ、沖田くんなんか…っきゃ!?」
「…お前は一生泣き虫のままでいいんでィ。こんな洒落ついたことしても似合わねぇんだよ」
唇に付いている桃色のグロスを消す様に強くなぞる総悟に、藍澤はまたハラハラと涙を溢し始めた。流石に俺も黙ったままでいるわけには行かず、藍澤を掴む総悟の腕を外して藍澤を引き寄せる。
「…てめぇいきなり来て何やってんだ。藍澤泣いてんだろ、そろそろやめとけ」
「…チッ。アンタは関係ねぇ。入ってくんじゃねえや」
「…関係はある。俺がこいつの世話頼まれたんだ。藍澤、いくぞ。コイツなんかに泣かされてんじゃねえ」
まだ泣いている藍澤の腕を引っ張って外に出る。何か飲んで落ち着かせようと自販機の前のベンチに座る藍澤に飲み物を買って渡した。
「…大丈夫か。あんま泣くと目ぇ腫れちまうぞ」
「っ、さ、さっきはありがとうぅ…っ」
「何が合ったんだよ、あいつと」
それからまた泣き始めた藍澤を見て、俺は面倒くさいことになったと、深い溜息を着いた。
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光華(プロフ) - お疲れごはん、リアルタイムで楽しく読ませていただいてます!こちらも面白いです!私は完全に土方さん推しなので、土方さんに落ちないかな((殴 どちらも更新楽しみにしてます! (2020年6月6日 22時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マピト | 作成日時:2019年12月6日 22時