【QK】トライアングル【fkr.kwmr】

５日目の感謝 ページ35

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「Aさんちょっと来て、相談があって」

「え？あぁ、うん」





デスクで記事の作成に励んでいると突然伊沢に呼び出しされた。こうやって呼び出される時は決まって何か決断する時で、彼はあまり人に相談しないのだけれど私には何故か相談をしてくる。


何故私なのかと言われたら私だって分からないけど、多分川上とか信頼している人間は伊沢と思考が同じなんだと思う。私は伊沢も含めたその周辺の人間とは考え方が多少違うし、意見もズバズバと言うタイプだからなのかなって。





「で？何？」





呼び出されたのは会議室で、案の定そこには誰もおらず私と伊沢の２人きり。ここで会議してる時みたいな割と真剣な表情をしているので空気が強ばっている。





「それなんだけど…」





と伊沢が指さした先にあったの鮮やかな紫色の花束。くっそ、油断してた。今日の感謝担当は伊沢だったのか。花束から伊沢へと視線を戻すと今にも爆笑しそうなあの表情で此方を見つめていた。ファンならわかるでしょ？あのギリギリ笑いを堪えてるようなムカつく顔。





「あはははは！」





ついに堪えきれ無くなって五感喪失クイズの時に多発していたあの笑い声で高笑いし始めた。





「解せぬ」

「はー！面白い。これまでやってきた奴らがサプライズにならなかったって言ってたからどれだけ察しがいいんだよと思ったら！」

「くぅ…だって！伊沢真剣な顔してたから！」

「主演男優賞貰っちゃうな〜」

「なわけあるか」





ようやく笑いが収まったらしい伊沢は目の前にある花束を手に持って軽口を叩きながら私の前に立った。





「ふざけてないで私に感謝しなさい」

「その言い方…いやなんでもないっす。まぁお世話になってるのは事実なんで感謝しますよ」





言い方が言い方だったから破天荒な女王様みたいになっちゃったけど、決してそういう意味では言ってない。感謝するために呼んだんだったらふざけるなという意味で言ったのだけれど少し誤解されてしまったみたいだ。





「俺からはツユクサです。綺麗でしょ？これ万葉集でも歌われてる草花だから昔から大切にされてきたんですね〜うんうん」

「こういう時でも知識ひけらかすんだ」





自慢げに言う伊沢にドン引きした振りでもしておいたけど、いつもと変わらない伊沢節には安心すら覚える。私も何年も一緒に居たから汚されてしまったのかな。





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