降谷先輩。 【降谷零】

その17 ページ18

*°


｢今日は何だかんだでありがとうございました｣



｢明日からテストだろ、風邪引かれたら困る、お前なら赤点を取りかねないからな？｣


｢何も言い返せないですけど心配してくれてありがとうございます。あと、先輩はもっと素直にならないとモテませんよ｣


｢お前もな｣



相変わらずの会話をしながらも先輩は私を送ってくれていた。


しかもサラリと道路側を歩いているあたりは優しい。


いや、先輩の事だからきっとたまたまだ、そういうことにしておいた方がいい気がする。



｢あ、家すぐそこなのでここで大丈夫です｣


｢すぐそこって…｣


｢まぁ、あのマンションの一室の事ですね…ちなみに私も一人暮らしですよ｣


2人で見上げたマンションはいわゆる高級マンションだった。


先輩がめずらしくとても驚いた顔をしている。


そりゃ驚きますよね…なんか、それについてはすみません。



口には出さないけど。



｢やっぱり姫宮って"あの"…｣


｢そうですね、"あの"姫宮です。でも私は私なのでこの話はどうでもいいんですよ｣


別に隠しているわけでは無いが自分の身の上話は好きじゃない。



だからこの話はここでお終い。



｢服はそのうち洗って返しますね。今日は本当にありがとうございました｣



先輩に、なにか言ってはいけないことを言いそうになる前に一線を引く。



こうして私と先輩の長かったような短かったような1日は終わった。

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