藤井くんの彼女(仮)

デート、しませんか？ ページ32

｢それでそん時しげがさぁ…｣






交換してもらったいちごオレが残り４分の１ぐらいになった頃


緊張もすっかりほぐれていた。




藤井くんはクールそうに見えて実はよく話す。





最近あった事とか、家族の話、部活の話



色んなことを楽しそうに話してくれるし

その話を聞くのが私は大好きだ。



時々同じ話をすることもあるけど、笑




藤井くんの楽しそうな顔を見れるなら何回だって聞ける。





｢ほんでな？

俺はやめろって言うたのにさ、｣





いつも目を見て話してくれる藤井くん。


だけど話の途中で言葉が止まると同時に

その視線は窓の外に向けられた。




｢………？｣



その視線を追って大通りを見るけど

特に何かがある訳では無い。





｢藤井く、｣

｢ごめん、ちょっと待ってて｣




あまりに必死に何かを見つめるから

気になった私の声を遮るように彼はそう言って席を立ち、店を出て行った。





なんとなく、見ない方が良い気はした。


だけど気にならない訳がなくて


藤井くんを目で追ったその先で



藤井くんは通りを歩く一人女の人の腕を掴んでいた。





…………私はあの人を知っている。


いや、うちの学校の生徒で知らない人は多分いない。







美奈さん。




それは藤井くんの元カノだったから。

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