20 ページ21
「ん〜何から聞こうかなぁ…俺らの事どう思っとる?へぇ、敵ね、まぁ今はええよ。じゃぁ家族の事はどう思っとん?」
最初の質問はそれ程意味が無かったのか、オスマンさんの自問自答の様に思えた。家族ね…いや、考えちゃいけない。意識を家族から逸らそうとするも、会いたいからか、それとも家族に対する承認欲求が強いからか、如何しても出来なかった。
「誘拐届出されとったよ、でもそれだけ。別に探してないんやないかな、情報はロボロの管轄やし、聞きたいならロボロな。Aちゃんのお兄ちゃんもお姉ちゃんも、普通に大学行っとるらしいよ。Aちゃんが居らんでも普通の生活、送れてるめう〜」
オスマンさんから聞いた知りたい事は、私にとって知りたくない事だった。体の自由も利かないし、心の制御も利かない。目に映る深緑は毒でしかなくて、眼底が熱くなったがぎゅっと目蓋で蓋をして、涙を溢さないようにした。
「言ったじゃん、泣いても大丈夫だって。ほら目、腫れちゃうでしょ。はい泣いて良いよ。もう少し頑張ろうね。」
ひとらんさんに頭を撫でられる。此処に来てから何度も体験した事なのに、今に限ってお母さんを思い出してしまって、折角押さえ込んでいた涙は堰を切ったように流れた。
「もう、優しくしてあげるの早いんやない?Aちゃん、今ひとらんとお母さん重ねたやろ、Aちゃんのお母さんってそんな優しい人やったん?お父さんもやで、正直シッマの方が褒めてくれるし、一緒に居て楽しいんやない?」
お母さんが最後に撫でてくれたの、いつだっけ。お父さんが褒めてくれたのは?不安だけが募っていった。お兄ちゃんもお姉ちゃんも、日常を送っているなんて。最初から、私なんて居なかったみたいに。
「お兄ちゃんはショッピ君が居るやん、お姉ちゃんは…まぁ要らんかな。寂しいやろ、不安やろ、よく分からん感情が渦巻いとんやろ。その気持ち、俺なら代弁してあげれるめう〜。Aちゃんが抑圧しとる深層心理、聞きとうない?」
ひとらんさんは飽きずに私の髪を弄んでいる。オスマンさんの雰囲気は一気に優しくなった気がした。気疲れかもしれない、身体が怠くて頭がほわほわとして、何も考えず頷いてしまう。
「……Aちゃんは、家族なんか要らんって思っとるんよ。」
そっか、そうかも。私、必要として無いのかな。でも、でも私…
「家族の事は分からない、でも私には、待ってる子が居るから!」
自分の叫ぶ声を最後に、意識が途絶えた。
2212人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆう - 幸せなハッピーエンド(?)になって良かったです!! (5月22日 22時) (レス) @page42 id: f98c154ca8 (このIDを非表示/違反報告)
はゆり - 上から目線失礼致しました (4月27日 23時) (レス) id: 6422253908 (このIDを非表示/違反報告)
はゆり - ハッピーエンド感が漂ってますけどなんて言うんやろ深く?見たら意外とバッド?エンドですね!まぁ夢主ちゃんや、d!の人達が幸せなら私は何でも良いですけど。 面白い作品ありがとうございました! 他の作品も好きです!これからも応援しています。頑張ってください (4月27日 23時) (レス) @page42 id: 6422253908 (このIDを非表示/違反報告)
杏豆 - とってもおもしろかったです!素敵な作品ありがとうございました! (2022年9月3日 11時) (レス) @page43 id: d80eb34582 (このIDを非表示/違反報告)
きつね君。(プロフ) - コメ失礼します。大好物が詰まりに詰まっていて無事昇天することができました!!素敵な作品をありがとうございます!! (2022年8月6日 6時) (レス) @page43 id: f4cd021470 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:誠 | 作者ホームページ:http://around-the-clock
作成日時:2020年7月22日 21時