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「…そんなの、知ってるんじゃないですか。ひとらんさんも、エーミールさんも私の好みは知っていましたから。」
将来の夢なんて無い事も、知ってるんじゃないの?警戒心丸出しで言った筈なのに、チーノさんは愉快そうに笑っただけだった。
「あは、バレました?知ってますよ、さっき聞いた事全部。出来ればAさんの口から聞きたかったんですけど、嫌われたく無いので止めときますね。」
遅いよ、もう既に嫌いな人ランキングに入ってます。そんな意味を込めてコーンスープをまた一口飲んで、スプーンを置く。朝食を食べていない事は調べなかったのだろうか。
「あ〜もうお腹一杯になりました?まだ少ししか食べてないじゃ無いですか。ま、無理して食べろなんて言う鬼畜な奴はここには居ませんから大丈夫ですよ。でもAさんの事が心配なんです、体調崩したりせんかなって。」
あからさまに困った顔をされ、罪悪感が芽生えた。同時に嫌悪感も。両親にも、お兄ちゃんにもお姉ちゃんにも、朝ご飯を食べなくて心配された事なんてないのに、そんな事言わないで欲しい。本当に、戻れなくなってしまうから。
此処に来てから誰かの温もりに触れる事が多くなった。確かに歪んだ感情も多かったけれど、抱き締めて貰ったり、好きな物が出てきたり。沼に嵌るような感覚に、寒気がした。
「どうしました?あ、そうだAさんにとって良い事教えてあげます!Aちゃんの仲間の魔法少女の…名前は忘れましたけど、黄色の子。あの子生きてるらしいですよ。今日も立ち向かってきて、魔法少女頑張ってるな〜」
絶対勝てへんのに、と最後に付け足された。生きてたんだ、よかった!まだ私にも帰れる場所があったんだ。
「新しいピンクの子と戦ってましたよ。Aさんの事なんか忘れとるんやないですかね?」
喜びも束の間、希望が音を立てて散っていく気がした。新しい、ピンク?私の立ち位置に知らない誰かが立っていて、あの子と戦ってるの?考えれば考える程涙が溢れてきた。
「可哀想なAさん、ほら大丈夫です、俺らが一緒にいてあげますから。俺らが欲しいのはAだけなんやで。Aの代替品なんて要らんし、皆Aを愛してます」
隣に移動してきたチーノさんにあやす様に抱きしめられた。こんな事になったのはこの人のせいなのに他にすがる物がなくて、彼に体を預けた。
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ゆう - 幸せなハッピーエンド(?)になって良かったです!! (5月22日 22時) (レス) @page42 id: f98c154ca8 (このIDを非表示/違反報告)
はゆり - 上から目線失礼致しました (4月27日 23時) (レス) id: 6422253908 (このIDを非表示/違反報告)
はゆり - ハッピーエンド感が漂ってますけどなんて言うんやろ深く?見たら意外とバッド?エンドですね!まぁ夢主ちゃんや、d!の人達が幸せなら私は何でも良いですけど。 面白い作品ありがとうございました! 他の作品も好きです!これからも応援しています。頑張ってください (4月27日 23時) (レス) @page42 id: 6422253908 (このIDを非表示/違反報告)
杏豆 - とってもおもしろかったです!素敵な作品ありがとうございました! (2022年9月3日 11時) (レス) @page43 id: d80eb34582 (このIDを非表示/違反報告)
きつね君。(プロフ) - コメ失礼します。大好物が詰まりに詰まっていて無事昇天することができました!!素敵な作品をありがとうございます!! (2022年8月6日 6時) (レス) @page43 id: f4cd021470 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:誠 | 作者ホームページ:http://around-the-clock
作成日時:2020年7月22日 21時