恋をしてしまった。【澤村大地】

初めてスクイズを見た。 ページ3

手伝います、と告げた声は私にしては珍しく震えていなくて、顔を上げた先には驚いた顔の美人さん。

｢いや、大丈夫だよ？｣
｢手伝います、練習を中断させてしまったの私なので。それに見てるだけじゃ落ち着きませんし。お願いします｣

さらに私にしては珍しく長文を話してしまった。こんなに喋って私明日喉壊さないかな。じっと見つめて見ると、美人さんは嬉しそうに顔を綻ばせた。

｢本当？ありがとう。じゃああの子........谷地さんと一緒にスクイズ洗って、もう1回ドリンク作ってくれる？｣
｢わかりました｣

スクイズって何だろ。体育館を出て、その谷地さんを探す。谷地さんって多分ボブカットの子だよね？
体育館を出て右手にある水道に、その谷地さんは居た。

｢手伝います｣

すっと横に立ってボトルを手に取る。これがスクイズかな。突然隣に立ってスクイズを洗い出す私に、谷地さんはぎょっとして飛び上がった。

｢ええ？！さっきの人？！だだだっ大丈夫ですよ！？｣
｢ううん、何もしないのも嫌だから｣
｢で、でも、悪いですよ｣
｢練習の邪魔はしないし、武田先生にプリント渡したらすぐ帰ります。........迷惑でしたか？｣

素人が手伝っても迷惑なんだろうかと不安になって隣を見れば、再び大袈裟に首を振った谷地さんは｢そんな事ないっす！！お願いします！！！｣と頭を下げてきた。

｢私ドリンクの作り方知らないので、申し訳ないけど教えて貰えませんか？｣
｢もちろんです！！｣

私も最近入部したばっかりなんですけど！と嬉しそうに私に作り方を教えてくれた。入部したばっかりって事は、1年生？同い年？

｢あの、1年生なんですか？｣
｢？はい！｣

5組の谷地仁花です！とこれまた元気よく教えてくれた。同い年じゃん。

｢日向と同じクラスなんですよね！｣
｢う、うん。1組の十河です｣
｢十河さん！よろしくお願いします！｣
｢あ、うん。よろしくね｣

同い年なら敬語もいいよ、と言えば、笑って了承してくれた。

ドリンクを2人で分けて体育館に運び入れて暫くした時、丁度休憩に入ったようだった。そう言えば武田先生来ないな、話長引いてるのかな。どうしよう、これ以上居座るのもな、とイスに座って考えていたら、突然歓声が上がって、肩を揺らす。

｢十河さーん！！｣

バタバタと駆け寄ってきたのは日向くんとあと数人。あのかっこいい人の姿もあった。

｢な、なに｣

警戒して身を固くすれば、日向くんは笑顔で口を開く。

｢手伝ってくれてありがとう！！｣

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