集中できない。 ページ18
ぱぁんっと綺麗に上がったレシーブは、吸い込まれるみたいに弧を描いてセッターに返った。
｢ナイスレシーブ！！大地！！｣
耳に入った名前にボール拾いをしていた手が思わず震える。一瞬で頭から先輩の表情が浮かんできて、私は慌てて首を振った。
集中！！！！
仮入部でパタパタと体育館を動き回っていれば浮かぶこともないと考えていたけれど、それは間違えだったようで、むしろサワムラ先輩が動く度、声が聞こえる度、名前を呼ばれる度にポコポコ浮かんできて本当に集中できない。
本当にどうしたんだ、と深くため息をつきながら私の両手に収まりきらないバレーボールをカゴに戻した時。
｢どうした？ため息ついて｣
突然降ってきた声に驚いて私はカゴにボールを戻していた両腕を突っ込ませてしまった。お腹にカゴが当たって音を立てる。
｢さっ、サワムラ先輩......あ、どうも........｣
｢？どうも。何かあった？｣
どうやら紅白戦が終わって休憩に入ったようだった。気づかなかった私ヤバすぎる、本当に集中出来てない。真面目にみんなしてるのに、申し訳ない。
｢いえ、何もないです｣
｢そうか？さっきもぼーっとしてたけど｣
バレてた！！！
｢す、すみません......｣
｢いや、怒ってるわけじゃないよ。十河さん、日向の話とかこの前とか見る限り真面目だし。ちょっと心配になっただけだから｣
｢あ、や、すみません........｣
ペコペコと頭を下げる私に、サワムラ先輩は困ったように眉を下げた。
｢別に謝らせたいわけじゃないよ、本当に何かあった？｣
優しくて包み込むみたいな声だ。本当に高３なのかな、サワムラ先輩。とっても大人だ。こんな仮入部の後輩にも優しいなんて。
私はなんだか恥ずかしくて、自分のつま先を見ながら口を開く。
｢その、ちょっと、上手く集中出来なくて｣
｢ああ、まぁ誰にでもそういう日あるよ｣
なんだそんなことか、とサワムラ先輩が笑う声がする。思わずその笑う表情が見たくて顔を上げて。
＿＿＿心臓が、走った後みたいにドクリと音を立てる。
初めて見る、先輩の眉を下げて、なぁんだそんなことか、と少し目を細める笑い方。昨日見た屈託のない明るい笑顔でも、オドオドする私に対する優しい笑顔でも、部活の後輩へ向ける安心感のある頼もしい笑顔でもない。
途端、顔が熱くなって再び顔をつま先に向ける。
........駄目だ、また集中出来なくなる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 528人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちんすこう - 更新しないんですか？凄く楽しみ待ってます。数ある大地さんのお話の中で一番好きです！ (2020年5月12日 10時) (
レス) id: 9e27674b7b (このIDを非表示/違反報告)
奏(プロフ) - 草さん» 返信遅れてしまって申し訳ありません。そうなんですね･･･！知識不足でした、ありがとうございます。大地さん大好きなので我慢出来ずに書いちゃいました。読みやすいと言っていただけて安心しました。妬いちゃう大地さん難しかったので萌えて頂けてなによりです。 (2019年11月5日 21時) (レス) id: 3e7d8a8bee (このIDを非表示/違反報告)
草(プロフ) - 早生まれは1/1から4/1で、遅生まれが4/2から12/31なので三月生まれの夢主は遅生まれではなく早生まれですね。大地さん夢珍しい上に文が読みやすいです。妬くところ大地さん普通の高校生で萌えました。 (2019年11月2日 23時) (レス) id: 59c85b2532 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：奏 | 作成日時：2019年9月8日 20時
