鉛色の空〈JW青×桃〉２

4　言い聞かせる ページ4

side 紫






小瀧の所へ向かう途中、5秒だけ職員室に寄った。
そして屋上に出る扉の鍵を二つ、ポケットの中突っ込んだ。
別に深い意味なんかなくて、ただ、久しぶりの晴れ間でも見て少しでも気分を落ち着かせてほしいと思った。



屋上へ続く最後の踊り場を曲がると、藤井の言った通り、消火器と壁の間に挟まるように体を畳んで座り込み、しんどそうに息を吐く小瀧をがそこに居って。


「小瀧、大丈夫か？」


駆け寄って目線を合わせると、小瀧は閉じていた瞼を薄く持ち上げた。


「・・・・先生、
はま、だ・・・・、せんせ・・」


確かめるように俺の名を言い終えると、
ひっく、としゃくりあげて、また目を瞑る。


「せ、先生、
りゅ、流星、に、会わへ、ん、でしたか？」


苦しさのピークは過ぎたと見えても、
まだ息が上がって平常には程遠い状況で
無理矢理しゃべらんでええのに、
よっぽど気になるんやろうな。


「会うたで、ってかアイツに呼ばれてん」

「り、流星、お、っ怒ってましたか？」

「・・・怒っては、無いと思うで」

「、・・りゅ、・・、・・・」


何かを話したげに、涙しながら口を開いたり閉じたり、
その様子を見て中腰でいるのをやめて自分も足を崩した。


「喋んならゆっくりでええから、
ちゃんと息吐け」

「・・・せ、っ・・・せんせ、おれ、」

「おん、」

「・・・・りゅ、流星、に、
俺が嫌いなんやろって、
い、言われて、・・・そんなちゃうのにっ、
返事、できひんくて、おれ、」



こいつらは、ほんまに。
不器用すぎて、逆にこんなにも器用に擦れ違って。



「っご、ごめんなさい、おれ、
せ、んせ・・・迷惑、」


大きく息をついたのが溜め息に聞こえてか、小瀧はそう言って謝った。



迷惑とは、思ってへんよ。



「お、おれ、さいきん変で、
前はこんな泣いたりせえへんかったのに、
流星の前でも、濱田先生の前でも、っ
こんな、おれ、おかしくなってまってっ、」

「・・・おかしくは、無いで、
泣いても少しもおかしくようなことやし、」


それに藤井の前でも、
俺の前でも、ってのは少し語弊がある。
小瀧が泣くのは、いつも、藤井のことでだけや。
きっと相手が誰やって変わらへん、
俺に心を許しとるわけやない。



───まるで自分に言い聞かせるような思考、に
なるのは何でやろ。

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