1 ちがうって言えない ページ1
side 桃
人前で滅多に泣かないこと。
アイツの前で以外、って前に注釈がついてまうけど。
それは長い間密かに、おれのつまらない誇りやった。
けど今となっては、泣かなかったのか、
泣けなかったのか、わからない。
濱田先生の前でも、流星の前でも、
こんな風に簡単に泣いてしまう。
おれは一体どうなってまったんや。
───はなして、って、情けない声。
おれに追い付いて小さく息を乱す流星に、そうお願いしたらすぐ手を解いてくれて。
是が非でも屋上出たいなんて思ってるわけやないのに、意識と別物みたいにおれの体は勝手に動いて、鍵がかかってるのがわかりきったノブを回し、チェーンをひっぱっていた。
流星が、危ないで、っておれを気遣ってくれて、それが何でかとても嬉しかった。
確かに痛いねんな、と思ったら錆びついたその繋ぎ目が指に引っ掛かってて、血が滲んだ手を握り拳にして流星に見えないように隠した。
何で避けてんの？って言われて、
違う、って返事が頭の中でこだました。
嫌いなら嫌いって言え、って言われて、
違うそんなわけない、って返事の代わり、
何のやくにも立たへん涙が頬を伝った。
ちゃうよ。流星。そんなわけない。
「・・・・ん、わかった
わかったから、
泣かんで、」
何をわかってくれたん？流星。
「ごめんな、気になってもうて、
放っとかれんくて
もうやめるから、」
ちがう。流星。
流星。
「・・・・ちゃ、・・・っう、
・・・・っ」
この場から早く立ち去りたいけど、泣きっぱなしのおれを一人にすんのもな、って。
優しい流星の気持ちが滲みでる困り顔に、はよ泣き止め、そんで誤解やってちゃんと言え、
思えば思うほど気持ちと反比例して涙は流れ続け、声は言葉にならず、ただ呼吸が荒くなっていく。
「・・・ッ・・っ、は、」
「・・・小瀧？
何やお前、具合悪いんか？」
「っ・・へ、き、・・・・」
「いや平気ちゃうやろ、」
ドアにしなだれかかるおれに、
流星の動揺した声。
「ちがっ、・・・、・・っ、」
「先生呼んでくるわ、誰か、
───濱ちゃん、ちゃうか淳太先生？
誰がええ小瀧、」
ちがう、
流星、
流星がええ、って。
流星が、このまま側におって、って
そんなこと、言えるわけないから。
涙に苦しさを逃がして、必死に、
回らない頭を回した。
「っ・・・はまだ、せんせ・・・」
気のせいか流星は悲しそうに笑って、
そして頷いた。
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まいん(プロフ) - Noさん» ありがとうございます。わざわざコメントまで書いていただいて恐縮です。すみません。そんなふうに言っていただけてこちらこそ本当に嬉しいです。ありがとうございます。 (2021年4月30日 22時) (
レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - かこさん» Oh…ありがとうございます(泣)こちらこそ早速ご覧いただき本当にありがとうございます。お待たせしてすみませんでした。 (2021年4月30日 22時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
No(プロフ) - ずっと待ってました>_<本当に嬉しい限りです。 (2021年4月30日 18時) (レス) id: a928634097 (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - まいんさん» ずっと待ってました（ ; ; ）更新してくださって本当にありがとうございます！ (2021年4月30日 14時) (レス) id: 6e72dd3f11 (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - 名無しさん» お恥ずかしいです。もったいないご感想で恐縮です。そして嬉しいです。私の小説に対してなのか不安になってしまうほどです。何かの間違いでなければ、本当にありがとうございます。 (2021年4月30日 11時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まいん | 作成日時：2019年9月6日 19時
