26 制服の端 ページ26
side 青
「小瀧!」
小瀧は鞄肩に引っ掛けて花壇の前に突っ立ったまま、距離的には聞こえてるはずやのにこちらを見ようともしない。
「今、来たん?お前、傘は?」
長い間ここに居たのか、髪の毛も制服ももう水を弾かないほど濡れている。
「何・・・どうしたん、いつからそこに居ってん、びしょびしょやんけ」
質問にも、何の反応もない。
小瀧の視界に入るように花壇との間に立つと、水捌けの窪みで泥水が派手に足元を汚した。
「おい、小瀧お前、大丈夫か?」
「・・・あ・・、ふふ、じいくん、」
でかめの声だしたらやっと口きいたけど、ずっと下向いたまたこっち見んから目が合わない。
しかも藤井くんてなんやねん、
流星でも流星くんでも無い。
「・・・流星て、呼べや」
「か、かかぜひいてまうよ、藤井くん」
「・・・・お前もやんけ」
「あ、うっうん、じゃあ」
何なん、
よそよそしいってレベルやない。
小瀧は相変わらず目を合わさずに、俺の隣を横切る。
何や、これ?
何や、おかしい。
「小瀧、ちょっ待て」
「、っうぁ、なっ何、するん、・・・・」
「待てって、こっち向け」
「い、・・・いやっ」
鞄強めに引っ張って若干力任せにこっち向かしたら、
何かあったんやろ?て
聞く前に分かってもうた。
雨と、角度のせいで見えてへんかった。
無理やり俺の方向けさした小瀧の顔、頬の片方が真っ赤に腫れ上がって、目と口元を圧迫しとる。
そのせいで息するごとに顔を歪めるのが痛々しい。
「・・・・・誰にやられてん、」
小瀧は大きく顔を左右に振った。
傷にさわる、と思わずその頬を手のひらで抑えた。
小瀧はそれを嫌がって、俺の手を払うから。
腹立って、払われんように後頭部ごと掴んだった。
「・・・大丈夫か?」
ふるふる、と頭を微かに振る。
良かった。こんな状況で頷かれたら俺にはもうどうもできん。
「・・・だ、大丈夫やなぃ。
い、っ痛い・・・・」
今度は俺の腕も払い除けたりせず、俺の制服の上着の端、ぎゅっと握りしめて。
泣き出しそうになりながら、頑張って沢山瞬きをして
涙は見せようとしない小瀧が悲しかった。
そんな悲しみと、怒りと、不謹慎にも抱き締めたい気持ちを抑えるのに必死で、
「誰にもやられてへん」、
小瀧が小さく呟いた言葉には気付かんかった。
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まいん(プロフ) - naさん» ありがとうございます。もう忘れ去られてると思ってるので嬉しいです。お時間割いて見ていただいてわざわざコメントまで、本当にありがとうございました。 (2020年5月18日 23時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
na - はじめまして。このお話が本当に面白くて絶対に完結させてほしいです。 (2020年5月2日 4時) (レス) id: 195cac4769 (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ありがとうごさいます。もう本当にそんな風に言っていただけて身に余る程幸せです。短編集も見ていただいて有り難いとしかいいようがありません。浮かれた勢いで調子乗って更新してしまったので、またお時間あるときにでも良ければ見てやってくださいね。 (2019年7月18日 8時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
###(プロフ) - まいんさん» いえいえ、どの作品も本当に面白くて、私の目は間違ってなかったなと自分を誉めたいぐらいです(笑) 短編集のほうも時々覗いているので気が向けば更新してもらえると嬉しいな〜と思います(..) (2019年7月18日 2時) (レス) id: 643eb217bd (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ###さんいつもありがとうございます(;_;)色々考えながら読んでくださり、ありがとうございます。気になる展開と言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます (2019年7月17日 21時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まいん | 作成日時:2019年6月24日 23時