2 汚れる靴下 ページ2
side 桃
遅刻なんてしたくてしとるわけやない。
あとからあとから溢れて止まらない涙と言い訳を必死で拭った。
茶色いレンガづくりの三階建ての校舎は、数ヶ所前から改修のために所々鉛色の足場と、
ブルーシートが見える。おれの気分を何倍にも重くする、鈍くくすんだ色。
正門の前で立ち止まり、右手を胸に当てて深く息を吸い、吐き出した。
大丈夫。
職員兼来客用のでっかい駐車場を突っ切ると、表玄関が見える。
駐車場とは反対側の校庭に、体育の終わりのジャージ姿を何人か捉えた。
一人だけ、名前を知ってる。
自分と同じくらいの長身で、でも自分との共通点はそれだけで
周囲に人が絶えなくて
銀色のふわふわな髪色の派手さとは対照的な穏やかな笑顔と、少しやんちゃそうないたずらっぽい表情と。
なにもかも自分とは真逆で、こんな風だったら学校生活も全くちゃうんやろなって思ってた。
「・・奴て、・・イヤよな・・!」
耳に届いてきた声に体が強張った。
何の話やろうか。
何でもかんでも自分のことを言うてるんやないかって思ってまう、暗い性格。
何とかしたいと思ってはいても、生活の中でいつのまにか染み付いてしまった癖がなかなか手放せへん。
はやくこの場から去ろう、と思った瞬間、
すぐうしろをあの眩しい銀色が通った。
汗が張り付いたシャツと制服が、背中側だけ熱くなるような思いがして、動揺する。
気ばかり急いで伸ばした自分の出席番が書かれた靴箱の中で、右手は空を掴んだ。
あぁ、また
こんなときに限って。
恥ずかしい。
自分がいやになって、そんな自分を、誰にも見られたくなくて。
ふと後ろを、振り向くと、同じようにこちらを見る瞳と視線がぶつかってしまった。
色素の抜けた、薄い銀色の、前髪の隙間から覗く、綺麗な目と。
予令が響いて、友達に名前を呼ばれたその人が、おれから先に目線を切って去っていった。
何もない靴箱から右手をひっこめて、冷たい廊下の上、靴下をひたひたと鳴らせて、
おれはぼうっとした頭で職員に向かった。
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まいん(プロフ) - naさん» ありがとうございます。もう忘れ去られてると思ってるので嬉しいです。お時間割いて見ていただいてわざわざコメントまで、本当にありがとうございました。 (2020年5月18日 23時) (レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
na - はじめまして。このお話が本当に面白くて絶対に完結させてほしいです。 (2020年5月2日 4時) (レス) id: 195cac4769 (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ありがとうごさいます。もう本当にそんな風に言っていただけて身に余る程幸せです。短編集も見ていただいて有り難いとしかいいようがありません。浮かれた勢いで調子乗って更新してしまったので、またお時間あるときにでも良ければ見てやってくださいね。 (2019年7月18日 8時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
###(プロフ) - まいんさん» いえいえ、どの作品も本当に面白くて、私の目は間違ってなかったなと自分を誉めたいぐらいです(笑) 短編集のほうも時々覗いているので気が向けば更新してもらえると嬉しいな〜と思います(..) (2019年7月18日 2時) (レス) id: 643eb217bd (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ###さんいつもありがとうございます(;_;)色々考えながら読んでくださり、ありがとうございます。気になる展開と言ってくださり嬉しいです!ありがとうございます (2019年7月17日 21時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まいん | 作成日時:2019年6月24日 23時