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「第2ボタン……」
卒業式の日の夜……ついこないだの出来事のように思い出せる。
大貴「…あんなのもう捨てたか」
足元に自分の鞄が置いてあることに気付き、急いでそれを逆さまにして床に中身をぶちまけた。
ゴトンッ、カラカラカラ…
A・大貴「「あ…」」
鞄から勢いよく落っこちた古い薬の小瓶。
もちろん薬なんか入ってない。
転がることで中に入っている“星の砂”がさらさらと回る。
ベッドに腰掛ける大ちゃんの足元まで転がり、爪先に当たって止まった。
大貴「ははっ……お前…これそのうち割れるよ?」
それを親指と人差し指でつまみ上げて、顔の高さまで持ち上げた。
瓶を見つめてから口角を上げてにこっと微笑んだ。
「……蓋開けてみて」
大貴「は?」
私が変なこと言い出すから、これの?…と戸惑いつつ…砂が入った小瓶をゆっくりと開ける。
蓋を外すことで見えた……
蓋の裏にくっつけてある……黒いボタン。
高校のブレザーのボタン。
それに気付いて、驚いた表情で私の方に振り返る大ちゃん。
大貴「ぷっ……あはははっ!乾燥剤じゃねぇんだからさ!」
お腹を抱えてしばらくの間笑われてしまった。
「だ…だって…。失くしたくなくて……わっ」
突然腕を引っ張られて彼の胸の中におさまった。
大貴「…もう返さなくていい」
先程までゲラゲラ笑っていたのに急に静かなトーンで話し始める大ちゃん。
抱き寄せる際にベッドに置いた小瓶が、掛け布団の上で倒れる。
星の砂が布団の上に溢れた。
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作者名:もちもち | 作成日時:2019年8月19日 20時