061 - 滲み出る優しさ ページ13
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「え……」
なんで私が怒られるの?
意地悪してきたのはそっちなのに…
私は間抜けな顔をしてたんだと思う。 突然、ぷっと吹き出す大貴くん。
ずるい…
嬉しくて、なにもかもかっこよくて、心臓止まるかと思った。
気持ちが抑えられなくなって、勢いよく正面から抱きついた。
大貴「ちょっ……おい、」
彼の持っていた傘が大きく後ろへ揺れて、雨水が一気に地面に流れ落ちるのが見えた。
「酔っちゃったから…もう歩きたくない」
そこまで酔ってないけど、抱きつく口実にした。
彼に縋り付くようにくっつく。
大貴「はいはい、じゃあまたタクシー呼んで帰ろうな」
「やだ………帰んない!」
大貴「は? …ったく…じゃあどーすんの」
前回もこうやって、帰りたくないってグズって彼を困らせた気がする。
「もっとこうしてたい。大貴くんと一緒にいたい。 ……今日、帰りたくない」
彼の背中に回してる腕にぎゅっと力を込めた。
大貴「っ…
お前さ、言ってることの意味分かってる?」
肩を掴まれて呆気なく引き剥がされた。 また顔がくっつきそうな距離で睨みつけてくる。
最初見た時は怖かったけど、今は別に怖気付いたりしない。
彼が本気で怒ってない気がしたから。
意味なんて分かってるよ。 子供扱いされたくない。
コクッて頷くと、私から視線を逸らして下唇を噛みながら何か考えてる様子。
困惑してるような、葛藤してるような。
大貴「とりあえず行くか……寒いし」
濡れてるな…ごめん、って私の肩を撫でた。
乱暴にキスされた時、傾いた傘から雨水が垂れたらしくて、私の右肩はかなり濡れていた。
ショルダーバッグから自分のタオルを取り出して、水分を取るように押し当てて拭いてくれた。 傘を買いに行った自分の方が全身濡れてるのに。
口調はキツめだし手荒なこともされたけど、優しさがこうやって滲み出ちゃう彼が、私はやっぱり好き。
痛くなかった? って、ビルの壁にぶつかった私の背中や頭の後ろをさする。
嬉しさと気恥ずかしさでまた彼に抱きつくと、小さなため息が聞こえた。
大貴くんはこんな展開望んでなかったのかな。
疑問ばかり頭に浮かぶけど、あれこれ訊く勇気は無い。
一緒にいたい、って気持ちを伝えられただけでも頑張った方だと思う……
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もちもち(プロフ) - せりかさん» コメント頂けてると思わず御返事遅くなりすみません; わわ…せりかさん!だだ…だ大ファンです…!信じられない…有難う御座います!!(T-T) (2020年3月4日 12時) (レス) id: e672c225a3 (このIDを非表示/違反報告)
せりか(プロフ) - こんにちは、初めまして。私は他の方のお話をあまり読まない方なのですが、もちもちさんのお話は文章が綺麗で楽しく読ませて頂いてますー!続き待ってますね。(^^) (2020年2月8日 15時) (レス) id: 02a6a09f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちもち | 作成日時:2020年1月17日 23時