雲の切れ間から After Story - Daiki.A

045 - 回想 ページ46

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〜回想〜



「仕事をやめる……私が？」



急に何を言い出すの？



大貴「こんなこと言うのもなんだけどさ、俺の収入だけで生活していけるじゃん。まぁ安定はしてないけど。

だからAが無茶して働くことないんだよ」



今回は無事だったけど何かあってからじゃ遅い。
…たぶん、そう言いたいんだよね？



分かるけどさ……



「私が……どんな気持ちで仕事してるか分かる？」


大貴「え？」



体調崩した時、本来やるべき仕事を他の人に頼まなきゃいけない時のあの苦しさ。



大丈夫だよ、って皆が私に気を遣うの…



当たり前だよね。
妊娠中の人が職場にいたら気を遣うもん。



たぶん部署の中で戦力外になってるんだよ、私。



いつ体調崩して仕事が出来なくなるか分かんないから。



妊娠前と今とでは、職場の人達との関係は変わっちゃった。



そんな私の気持ちなんて…



「分かるわけないよね………大貴ってサラリーマンとして働いたことがないんだもん」



少しムッとした表情になる大貴。 私達はリビングでコートも脱がずに立ちっぱなしで話をしていた。



大貴「お前だって……芸能人の気持ちなんて分かんないだろ」


「っ……」



それは……そうだ。



目の前にいる彼は芸能人なんだ。
普通の人とは違う生活をしてるんだ、って嫌でも認識させられる。



数秒間、私達の間に沈黙が流れた。



大貴「っ……ごめん、余計なこと言った。俺のことはどうでもいいんだよ」



大貴の方がすぐに冷静になった。



大貴「経験したことのない辛さを分かってあげるのって難しいな……」


「うん……」


大貴「代わってあげられたらいいのに…」



私には精神的な余裕が無くて…
大貴は私のことを想って言ってくれてるのに、



「そんな簡単に言わないでよ……」



キツく当たることしか出来なかった。



大貴「…………ごめん」



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