【あんスタ】僕らはずっと待っている

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石碑には、ある曲が刻まれている。


Requiem pro rege(王の為の鎮魂歌)と名付けられたその曲は、王の親友である騎士王が創った曲だ。


騎士王の創る曲には珍しい、酷く静かで細い、繊細な曲。


これまでの"王の命日"に、臣下たちがライブで歌ってきた曲。


彼がそれを見るのは、初めてだった。


けれど…どこか既視感があって、なんだか懐かしく感じる。





『……"前世の俺"。辛かったよね、苦しかったよね。今の俺には経験出来ないような…言い表せないような辛いことがたくさんあったよね。…本当に、お疲れ様』





騎士王が石碑の埃を払っている間に、彼は石碑に声をかけた。





『俺は王じゃないから、"俺"の痛みも苦しみも分からない。でも、"俺"が味わえなかった楽しみや嬉しさを。俺が代わりに味わってあげる』

「A！おまえもここ座れ！」

『ふふ、はいはい。…ねぇ、"俺"。安心して眠ってね』





騎士王が石碑にもたれ掛かるように座っているのをみて、彼も同じように石碑にもたれ掛かる。


…なんだか、暖かくて優しくて、心地よい。





「王〜、またセナがおれの創った曲にイチャモン付けてきたんだけど〜！ここはいいけどここは駄目とか言ってきてさ〜」

『ああ、なんか言ってましたね？キーが高くてどうたらこうたら…』

「そーそー！嫌んなったからここにAと逃げてきた！……ここは静かで、落ち着くなぁ…な、Aもそう思うだろ〜？」

『そうですねぇ…』





この心地良さが…きっと"俺"の作り上げてきたもの。





「…なぁ、"A"。また、来てもいい？」

『…いいですよ。俺も、"俺"も待ってますから』










fin

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