検索窓
今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:297,658 hit

ページ18

ツンと鼻をつく匂いに、ここが医務室だとわかる。

まだ頭はぐらぐらと揺れていて、とても起き上がれない。

視界がぼやけていたが、数回瞬きすると段々クリアになっていく。

右手に重みを感じて目線をずらすと、黄緑のパーカーが見えた。



『……ぞむ………?』

zm「…!」



カスカスとした声で名を呼ばわると、ばっと顔を上げてこちらを見やる。

ほっとしたように表情を緩ませたあと、泣きそうなのを堪えるように顔を歪ませた。



zm「……なんかやな事あったんやな…」



大丈夫やで、と手をにぎにぎしてくる。

それに、また安心してしまって涙が零れた。

ナイフを握っている少しごつごつした指で、涙を拭ってくれる。

その後もとりとめのない話をしてくれたので、ぐちゃぐちゃしていた頭と心が落ち着いた。



zm「あのさ、俺さ、幹部になったやん。そんでさ、あのー…Aに言いたいことあんねんけど、いい?」

『……なに?』



こんな時に言うことちゃうかもやけど、と言って何故かフードを深く被る彼に、変なの、と心の中で呟いた。

いつもなら言いたいことはすぐ言うのに。

改まってなんなんだろうか。



zm「俺な、Aのことな、ずっと前から好きやねん。ずぅっと前から。それこそ、Aと出会った時から」



Aは目をみはった。

途端に心臓が煩く鳴り出す。



zm「俺ならAの事理解してやれるし、守ることも出来る。甘えたいんやったら甘えていいんやで。俺はAの事責めへん」



口を動かすのが億劫で、なんとか両手を広げる。

意を汲んだゾムが抱き起こしてくれたので、そのまま彼を抱き締めてみた。

ぽんぽんと背中を撫でられて、なんだか子供に戻った気がする。



zm「な、俺結構優良物件やろ?どう?付き合ってみいひん?」



彼がいたずらっ子のように笑うと、鋭く尖った歯が唇から覗いて、ちょっと可愛いななんて思ってしまう。

ゾムに体を預けたまま小さく頷いて微笑んでみせた。

それをみて、ゾムは大きく溜息をついて強く抱き締めてきた。



zm「良かったー…」



嬉しそうに笑うゾムに微笑み返して、重たくなった瞼をそっと閉じた。

(7)→←(6)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (237 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
359人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 宇タさん» わわ〜ありがとうございます! (2021年9月22日 15時) (レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
宇タ(プロフ) - 泣きそうです。というか泣きました。好きです。 (2021年9月21日 23時) (レス) @page33 id: 03f7136296 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Tさん» コメントありがとうございます!申し訳ありません、作者はただいまd!から離れておりまして…思い出せそうにありません…本当に申し訳ありません (2021年2月19日 17時) (レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
- emさんのボマーってハンハンネタだったりしますか? (2021年2月19日 13時) (レス) id: 7059f04c94 (このIDを非表示/違反報告)
コレット(プロフ) - myona859さん» やー…ごめんなさい。私その作品読んでなくて……他作品からお借りしました… (2020年1月28日 5時) (レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:コレット | 作成日時:2020年1月5日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。