カタツバキの花を君に *Kei.I* (ページ17)

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「ねぇ有岡。Aちゃんのこと知ってたの？」

いつもは大ちゃんって呼ぶ俺の声に肩がピクっと動く。

こちらに振り向くことはなく、駅に向かって歩いたまま大ちゃんは口を開いた。

「…知ってたよ。伊野ちゃんとAは釣り合わないよ。あいつ人見知りで引っ込み思案だし」

その口振りは、幼馴染だということを物語っていた。

……なんだよそれ。

「そんなの有岡が決めることじゃないだろ。俺別にあの子のこと好きじゃないし。たまたま会って名前教えてくれたから気になってただけだよ。勘違いやめてよね～。」

俺の嘘つき。

自分から名前聞くなんてこと滅多にしないだろ。

でも、予防線を貼っておかないと、今は少しだけ怖かった。

俺の言葉を聞いてちらっと俺の方を見てから大ちゃんはいつもの調子で

「なんだよ、そんなことか。伊野ちゃん手出そうとしてるのかと思ったよ」

俺が手だしたら困るの？

いつも首突っ込んでこないくせに。

反論の言葉は声にならなくて、いつの間にか駅に着いてじゃあな、って反対側のホームに歩いていった。

なんだかむず痒くてイライラしてると

ピロンッ

「何だこの番号」

知らない電話番号からのメッセージを受け取り開いてみると、

＜Aです。伊野尾慧さんで合ってますか？＞

君らしいメールが届いていて

「登録してくれたんだ…」

なんだかいつもより幸せな気持ちで満たされた。