Lesson.6 ページ7
「ア、アイドル！？」
「まぁデビューはまだですけど」
「三月、おめでとう！夢が叶ったんだ！」
小さい頃からの夢。三月が頑張ってたのを知ってるから、すごく嬉しい。
三月は照れ臭そうに鼻の頭をかいて、ありがとな、と笑った。
「でも一織もアイドル？」
「成り行きですが、今はやり甲斐のある仕事だと思ってます」
「そうなんだ。そっか、2人とも頑張ってね。私、2人のファンだからね！」
そう言うと、2人は驚いたように顔を見合わせた。
「え、なんか変なこと言った？」
「いや、何か変な感じがしてさ」
「そうですね。Aにファンだと言われると少し気恥ずかしいです」
「なにそれ〜」
何だかおかしくて笑うと、2人は目を細めて優しく微笑んだ。
それが、今までとは何か違う気がして、ちょっとドキドキする。
ドキドキ……？
胸の中に生まれた感情に、戸惑う。
「オレ達がアイドルになっても、Aにとっては何も変わらないぜ」
「そうですね。あなたは私達の大事な幼馴染です。それは変わりませんから」
「うん。そう…だね」
ツキンと痛んだ胸を押さえる。
嬉しいのに、どうしてだろう。
「どうした？」
心配そうな三月の声に、慌てて何でもないと笑顔を浮かべた。
きっと何でもない。
「じゃあそれ食べたら帰るかー」
「そうですね」
楽しい時間はすぐ過ぎていく。
寂しく感じて思わず俯くと、頬に少し冷たいものが当たった。
「クリーム、ついてますよ」
それが一織の指だと分かった瞬間、頬が異様に熱を持った。
「わっ、な、な、なに！？」
「何ですか、その反応は！」
私につられたのか、一織まで顔を赤くする。
赤い顔の一織は、珍しくて、何だか可愛い。
「お前よくそんな恥ずかしいこと出来るよなー」
「兄さん！これは子どもが食べこぼしをした時の対処法です！」
「私は子どもじゃないよ！」
そりゃ、私は一織より1つ年下だけど…。
そんなに変わらない…はず。
「いいえ、あなたは昔から世話のかかる人なのは事実です」
「ひどい！三月何か言って〜！」
「うーん。世話がかかるのは否定しない」
「三月もひどい！」
「けど、一織も世話がかかるのは同じだぜ」
「に、兄さん！？」
一織に勝ち誇った顔をすると、何故か鼻の頭を摘まれた。
痛い…。
「喧嘩するなって。お前らは二人とも可愛い兄弟だってことだよ」
ニカッと笑った三月には敵わないなと思った。
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作者名：まいまい | 作成日時：2018年1月18日 23時
