【文スト】チェロの音はもういいから！！【ドストエフスキー】

十六曲目 ページ16

｢あれ？｣



(この薔薇本物じゃない薔薇だ
しかも…少し赤い…？)



毎年くる薔薇は全て本物であった。

だからこそ、嫌な予感しかしなかった。



心臓がドクドクうるさい。耳がタコになりそうなくらいに響いている。





｢どうかしましたか？｣



｢いや、この薔薇…染めた…？｣






その答えが知りたくて、フェージャの目を見た。
初めて目を見て話したが、なんだか初めて会った気にならないのはなぜだろうか。









｢ええ、染めましたよ｣



｢なにで？｣



震えながら、聞く









｢ヒトで｣









｢……は…？…｣


(ヒト？？？ヒト？？




ヒト…ヒトって、)



今、この男の狂気で自分の細胞まで総毛立った。



そんなあたしをみて、フェージャはただ笑ってるだけ。






｢何で、笑ってるの…？？？｣


｢可愛くて｣


(は？？？？？)





｢なに、それ｣



震駭としたあたしはその薔薇の束を落とし、足の力も抜けた。




フェージャはあたしを抱き抱え、ベッドに座らせた。慄きすぎてもはや、フェージャに何も言えない。






ヒトが、犠牲になった。

自分のために。

たかが薔薇に。



なんで？どうして？が頭の中から消えてくれない。

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