episode53 ページ5
*
『ただいま…。』
静まり返る真っ暗な部屋の明かりをつけ、
わたしはコートも脱がずそのままベッドにダイブする。
仰向けに横になったから、
直接明かりが目に入って眩しい。
目を守るようにわたしは
腕で自分の視界を遮る。
『熱い……』
指で唇に触れると思わずそう声が漏れる。
部屋は寒いのに、私の身体は火照って仕方がない。
弄ばれてるだけってわかってるのに
身体はなんて正直なんだろう。
「はぁ…」とため息をこぼし、
ゴロッと寝返りを打つ。
そのとき、扉付近に投げたバッグから
スマホの鳴る音がかすかに聞こえる。
わたしは重い身体を起こし、
スマホを取り出した。
『えっ…。』
画面に表示されていたのは“ 涼介さん ”の文字。
一瞬無視しようと考えたけど、
仕事の用だったら…と思ったわたしは
そのまま応答ボタンをタップした。
“ もしもし?A?”
わたしが出たのが意外だったのか、
少し驚いた声を出す涼介さん。
『はい。お疲れ様です。』
わたしはそう答えて、再びベッドに戻りそのまま座る。
『要件は…なんですか?』
“ 健人のこと。”
『そうですか…。』
出なきゃよかった。
一瞬にして後悔の念に苛まれた。
“ Aは知っておかないといけないと思って。”
そんなわたしの気持ちを察したのか、
涼介さんはそう告げる。
『…中島さんは、涼介さんの奥様と知り合いなんですか?』
さっき彼にかわされた話の内容を
今度は涼介さんにぶつける。
きっと本人が話してくれることはないから。
“ 希は…名字が3回変わったんだ。
一番最初は「佐々木」。今は「山田」。
その間に1回。希の親の再婚で名字が変わってる。”
突然何の脈絡もない話を始める涼介さん。
わたしの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
でも、その疑問は、彼の次の言葉ですぐに意味を理解することができた。
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“ 「中島」。それが山田になる前の希の名字だ。”
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楓子(プロフ) - 一年間くらい占ツクから離れてたのですが、久々に読んだらこのお話にどハマりしました!笑 (2021年3月3日 7時) (レス) id: 6aff9cb508 (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - 続きが気になります!どうなっていくんだろう。楽しみに更新待ってます (2020年11月26日 7時) (レス) id: 6ed94e9eec (このIDを非表示/違反報告)
ひこにゃん(プロフ) - 舞子さんこんばんは!最近セクゾにハマり舞子さんの小説に出会えました。Twitter探しても出てこなくて、もう他の鍵付きの小説は見ることができないのでしょうか?パスワードを教えていただきたいです( ; ; ) (2020年11月24日 0時) (レス) id: 7ea95f4951 (このIDを非表示/違反報告)
舞子(プロフ) - ぽんさん» ずっと読んでくださりありがとうございます( ; ; )完結できるように頑張ります! (2020年9月26日 23時) (レス) id: 63d5553da0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - 3年前からずっと読んでます本当に大好きです (2020年7月8日 12時) (レス) id: 77b2a65c8d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞子 | 作成日時:2020年2月23日 23時