episode49 ページ1
＊
『お疲れ様です。』
最後に残っていた補佐にわたしは挨拶をすると、
暗くなった部屋を後にする。
『疲れた…。』
エレベーターを待ってると
思わず溢れる本音。
涼介さんと別れたり、
中島さんのことが好きになって告白したり、
勝利の気持ちを知ったり。
なんだか、一度にいろいろあって
わたし自身、やっぱりまだ整理ができない。
仕事があってよかった。
唯一、何も考えなくて済む時間だから。
独特の音楽が流れ、
エレベーターの扉が開く。
誰もいない広いエレベータの真ん中にわたしは立つ。
はぁ、という溜息がまた一つわたしの口から溢れた。
結局中島さんには
車の中でも弄ばれただけ。
期待しても無駄ってわかっているのに、
期待して、何もなくて落ち込んで。
頭と心が付いて行かなくて自分に呆れてしまう。
ふわふわと下降していくエレベーターは停まり、
再び扉が開く。
警備員の人しかいないエントランスを抜け、
駅の方へと足を向かわせる。
『……』
「お疲れ、A」
駅へと向かう道路沿いを歩いていた時、
徐々にスピードを落とす車が目に入る。
すぐにわかった。
何度も目にして、何度も乗った車だから。
案の定、わたしの前で停止し、
パワーウィンドウがゆっくり下がる。
予想通りの彼が、
優しい笑顔でわたしにそう告げた。
『涼介さん…。』
「遅い時間までやってたんだね。」
『どうして…？』
「ちゃんと話したくて。とりあえず乗って？」
そう言って助手席の扉を開ける涼介さん。
どうすればいいかわからず、
そのまま立ち竦んでいると、
運転席の扉が開き、涼介さんが出てくる。
「俺のこと、嫌いになった？」
悲しそうな顔をする涼介さんに
わたしは何も言えず、
ただ下を向いて、小さく首を横に振る。
「俺と一緒にはなれないから？」
彼の問いかけにわたしはまた首を横に振る。
「じゃあ、どうして…？」
『…きたから。』
「え？」
『好きな人が…できたからです…。』
彼の目を見ることができず、
自分の黒いヒールに向かってわたしはそう呟く。
彼と出会って散々だって思ってたけど、
彼と出会って、わたしは涼介さんとの関係を絶つことができたんだ。
彼との出会いは決して無駄じゃなかったのかも。
そんなことを今この瞬間、
なぜか思ったんだ。
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楓子(プロフ) - 一年間くらい占ツクから離れてたのですが、久々に読んだらこのお話にどハマりしました！笑 (2021年3月3日 7時) (
レス) id: 6aff9cb508 (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - 続きが気になります！どうなっていくんだろう。楽しみに更新待ってます (2020年11月26日 7時) (レス) id: 6ed94e9eec (このIDを非表示/違反報告)
ひこにゃん(プロフ) - 舞子さんこんばんは！最近セクゾにハマり舞子さんの小説に出会えました。Twitter探しても出てこなくて、もう他の鍵付きの小説は見ることができないのでしょうか？パスワードを教えていただきたいです（ ; ; ） (2020年11月24日 0時) (レス) id: 7ea95f4951 (このIDを非表示/違反報告)
舞子(プロフ) - ぽんさん» ずっと読んでくださりありがとうございます（ ; ; ）完結できるように頑張ります！ (2020年9月26日 23時) (レス) id: 63d5553da0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - 3年前からずっと読んでます本当に大好きです (2020年7月8日 12時) (レス) id: 77b2a65c8d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：舞子
| 作成日時：2020年2月23日 23時
