甘くて甘い、【歌い手】【短編集】

ストーカー【sm】 ページ20

…何かがおかしい。


最近、日常生活で違和感を感じるようになった。

現に今も。


22時に近いこの時間帯は人通りも比較的少なく、マンションまでのこの道は普段もっと人通りはない。


それなのに私が歩くのと合わせるようにコツコツと革靴が鳴る。


ばっと振り向いても誰もおらず足音も同時に止まる。

一気にさぁっと血の気が引いて逃げ足でマンションに入る。


志麻くんが配信をしていないことは事前に確認済みなのでドアを雑に開けリビングへ駆け込む。


「うおっ。おかえりA」


強く志麻くんを抱きしめて頭を押し付ける。

しばらくしても一向に動こうとしない私に志麻くんは疑問を抱いたのか、


「…A？大丈夫？」


手にしていたスマホを置き頬をさらりと撫でられる。


『…志麻くん、』

「どしたん」

『……ううん、なんでもない、』

「なんやそれ」


志麻くんに迷惑をかけるわけにはいかない。

それにストーカーだって確定したわけじゃないし、と自分を落ち着かせた。


･


しかしその次の日、その次の日と仕事帰り毎回同じ現象が起こった。


同僚に相談したが

「それはストーカーでしょ、大丈夫なの？」

と言われてしまった。


…相談だけするのもありかもしれない。


もしこれが志麻くんのリスナーさんだったとしたら、なんて考えたくもない事だって浮かんできた。

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